わがりな大学生とミステリー大好きな中学生が、まわりのちょっとした事件を解決するお話です。★短編5作から成り立っていてサクサクと読めます。★坂木さんらしいほのぼのとした作風がとても表れています。★決して派手な事件ではないのです。本当に読者の私達の周りでも起こりうるような内容だからこそ身近に感じられる事が出来てなかなか楽しかったです。
いやいやこれは、いい!
一見地味にも思えるクリーニング店の店主になったカズの働きも、
ホームズ役の沢田、職人のシゲさん、マジシャン、幼なじみ‥
いろいろな人の善意やカズの人の良さが、商店街という設定と
ご用聞きも行うクリーニング店という設定にうまくマッチして本当にさわやかに回ってゆく。
引きこもり探偵シリーズの各地の名産や料理に引けを取らない、
コーヒーの淹れ方やクリーニングの知識と言った細やかな彩りが今回も光る。
クールなホームズとワトソン役が少しずつ、無理なく近づくシナリオもさわやかで心地よい。
まるで清涼感のあるソーダのような、素敵な小説。おすすめです!
坂木さんらしく、「日常の謎」ミステリーです。 舞台は、デパ地下の和菓子屋「みつ屋」、そこで働く人々と、「みつ屋」のお客様の謎をめぐるストーリー。
坂木さんの真骨頂といえば、登場人物たちの「つながり」。普通のミステリーでは、1度しか出てこないような役割の人物でも、坂木さんはしっかりと最後まで描いていきます。今作でも、そのスタンスは変わらず、主人公と関わることになった人々は、しっかりと主人公とのつながりを保っています。 さらに、嬉しいのは、どうやら今作の主人公、梅本杏子は『切れない糸』で舞台になった商店街にかかわりがあるということ。「梅本」という苗字にピンと来る方もいると思います(私は気づきませんでしたorz)。他にも、「はちさん便」などのキーワードも出てきます。
私的には、またあの商店街の雰囲気を少しでも味わうことが出来て嬉しかったです(^^)。どうやら、新井さんは元気にやっている様子・・・よかったです。 そういった、本作以外の物語とのつながりも見えて、面白さが倍増しました。 ※ストーリー自体は独立したものなので、本作だけでも十分楽しめます。気になる方は『切れない糸』『ワーキングホリデー』も読んでみてください。
肝心の「謎」の部分についても、面白い仕掛けだったと思います。本作では、「謎」は人物だけでなく、「和菓子」の中にも描かれています。歴史の長いものだからこそ「和菓子」にも「物語」があり、「謎」を生むのだと知りました。読んだ後、和菓子屋さんにいって、作中に出てきた和菓子がどんなものなのか、見てみたくなりました。
とてもよい作品でした。大満足です。
ひきこもり探偵シリーズ初の長編で、完結編です。
鳥井と坂木は栄三郎の友人であり、動物園でボランティアをしている安次朗に、動物園に住み着いている野良猫を虐待している犯人を捕まえてほしい、という依頼を受ける。
栄三郎のために動物園まで足を運ぶ二人だが、坂木はそこで、かつて鳥井をいじめた張本人である谷越と再会してしまう……
相変わらず善意の塊のようなお話です。
少々説教くさくもあり、それが嫌だという人はいるだろうけれど、私は好き。
どこまでいっても最後にはわかりあうことの出来るあったかな人間関係と、鳥井の作るものすごくおいしそうなごはんのシーンに癒されました。
また今回は鳥井だけでなく、坂木の持つ心の傷やその他の脇役の背景なども出てきて面白いです。
坂木と鳥井の関係にも、とりあえず決着がつきました。
今までの伏線から、一体どうなってしまうんだろうとはらはらしていたけれど、こちらもあったかく落ち着いてよかったです。
二人にはやっぱり、ずっと一緒にいてほしいなあ。
ただ鳥井の幼児逆行シーンが好きな私としては、ちょっとだけ物足りなくもありました。
不安定でかわいい鳥井がもっと見たかったなあ。
最後のおまけにこれまで出てきた地方銘菓と鳥井の料理のレシピが付いています。
これはちょっとうれしかった。
原作読まずに藤たまきさんのコミカライズという一点に惹かれて読みましたが、おもしろかったです。
特にキャラがいい。
引きこもりで独特の感性を持つ鳥井と、至って普通な友人坂木のコンビが読んでいて面白く興味深い。
これはBLなの?とBL好きのため勝手に穿った妄想を抱きつつも読んでいますが、いや、そうでなくても二人の関係こそがこの物語の主核。そう、重要なのは物語やミステリーそのものというよりは、この二人の友人としての関係性。
そしてミステリータッチの物語が現実的になりすぎないような効果を与えているのが藤たまきさんの絵。
どこか幻想的な絵は、重いシーンも重くなり過ぎないような自然な配分効果がある。
背景も細部まで細かく、トーンの貼り方一つからその光景が温かいのか、柔らかいのか、冷たいのか、そんな温度感や厚みまで伝わってくる。
帯キャッチは「癒し系ミステリー」だったが、まさに癒しが絵そのものにあって、非常におススメしたいライトミステリーコミック。
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