木のいのち木のこころ―天・地・人 (新潮文庫)
法隆寺最後の宮大工西岡常一とその弟子小川三夫、そしてそのお弟子さんたちのことばを伝えたのが本書。
えてして説教臭くなるところをぐっと抑えて、若い人たちへのメッセージにしたところが好感が持てると思います。
単なる技術論ではなく、長い経験に裏打ちされた職人論・自然論・教育論になっていると思います。
木に学べ―法隆寺・薬師寺の美 (小学館文庫)
ネイチャーライフを愛好する友人からすすめられて読んだ。
いかにも大工の棟梁さんが書いたような内容かと思っていたら、違った。
飛鳥時代に直結する1200年の歴史がある日本の木造建築。
それを宮大工として極めた西岡常一さんの経験をまとめあげた本。
彼は究極の宮大工職人でありながら、現場を取り仕切った大工として歴史的木造建築を頭と体で学びきっている。
それはまさに「実学」で、頭だけで考える学者の机上の論理を超えている。
西岡さんの語る全ては、経験と具体例で裏付けられているので、単に宮大工の具体例を示しているのではなく、
深く、広い、叡智の言葉になっている。彼の関西弁をとてもうまく生かした“聞き書き”もいい。
彼の語りの世界に、最初の1ページから入っていける。
「木も人間も自然の中では同じようなもんや。どっちか一方がえらいゆうことはないんや。
互いに歩み寄ってはじめてものができるんです。
それを全部人間のつごうでどうにかしようとしたら、あきませんな」
こうしたとても説得力のある彼の言葉と思考と実践を、知ることができる。
宮大工一筋に生きた人の生涯記録としても貴重。写真や図版も的確に掲載されていて、分かりやすい。
これを読んだら、法隆寺と薬師寺に行って、実際に見て来ようと思った。
本の終わり方も、落語みたいで、ひょうひょうとしていて素敵。