福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書
確かに力作だとは思うけれど、食い足りない。
原子炉がメルトダウンに至った時系列にもっと突っ込むことは出来なかったのだろうか。
いつ燃料が溶けはじめ圧力容器から溶出し格納容器破損まで至ったのか、その道筋については本書では一切触れられていません。
事故の時系列についてほとんど現場での対応にだけ焦点が当てられ、技術的考察から炉内の状況を推察するような記述はありませんので、そのような内容を期待して買われる方はがっかりするでしょう。
一方、被災後から事故に至るまでの官邸や現場の対応、事故後の官邸、東電、自治体、被災者の様子についてはかなり詳細に書かれていて読みごたえがあります。
また、独立検証委員会とはいえ委員は原子力村の面々。にもかかわらず東電や原子力村の構造的な問題点に踏み込んだところは評価できると思います。
ただ、殊更現場対応にだけスポットを当てることによって原子力発電の技術的な脆弱性そのものが過小視されている感は否めません。
例えば最終章の「事故は防げなかったのか」の段で1号機ICの作動状況の誤認が事故の最大要因に挙げられているけれど全電源喪失で二つのバルブが開かなかった状況のなかヒューマンエラーを事故の最大要因とするのは無理があるだろう。
計器も読めず、電磁弁も動作しない、センサー類はフェイルセーフで意図と逆の信号を出す、そのような状況に陥ったこと自体が最大要因であって、これは技術的な欠陥システムであったということだと思うのだけれど。
あと、図表が小さくてボケてたり全く読めないものがあり、せめて拡大して載せて欲しかった。
3.11 東日本大震災の真実 ~未曾有の災害に立ち向かった自衛官「戦い」の現場~ [DVD]
この国、我々の住むこの国で起こった災害ですが北海道、東北、北陸、関東以外に住むものにとって実際にはニュースで流れるもの、ネット上でみれるものでしかこの悲劇はわかりません。
この作品はそんな私から観ても、どのように被災地、被災者が体験し、自衛隊の方々がどのように考え、行動しているかが非常によくわかります。
特に、自衛隊の方々にスポットをあてていることで現状の悲惨さが伝わります。そしてなにより自衛官の頼もしさを感じました。
作者の熱意が良く伝わりました。
広瀬隆「福島原発事故と放射能汚染」 [DVD]
「原発」って何? どこが怖いの? と よくわからないヒトが 普通の日本人。
「原発は安全だ教育」のおかげで、すっかり洗脳されてしまった 私たち が、生きる為に何をしなくてはいけないか が 比較的分かりやすい 講演 だと思います。
家族や、寄り合い など 複数人数で 一緒に 勉強しましょう。
原発危機と「東大話法」―傍観者の論理・欺瞞の言語―
霞ヶ関文書ともよばれるような政策文書や審議会議事録等を読んできた私にとって、何か変だな、と引っかかっていることがありました。それは、なぜ、原子力政策を立案している人々がかくも無責任で、傍観者的なのであろうか、ということです。また、決定的な出来事や反論があっても、まるで何ごともなかったかのように、従前と同じように事が進んでいくのは、どうしてなのだろうか、と疑問に思っていました。
こうした場面は極めて多く、そのたびになんとも言えない気分を味わっていました。
安冨氏は、この本の中で、原子力に関連する様々な論説を分析し、無責任な言説がどのように展開されるのかを詳しく述べています。その分析ツールとなるのが、「東大話法」です。私は、この本の分析によって、長年の疑問が解けました。
「東大話法」というのは、あくまで話法を総称した名称です。安冨氏自身が述べていますが、東大出身者であっても「東大話法」を使わない人もいますし、その逆もいます。しかし、東大出身者および東大内部にそのような言説が多いというのは、安冨氏自身が、東大教員として内部で実感しているようです。
ではなぜ、こと東大で、「東大話法」が使われるのか。
「東京大学という権威を利用すると、それは非常に効果的であって、多くの人をだまくらかせるのであり、そういう経験を積むことによって、東大関係者は自信満々となり、ますます東大話法に磨きをかける、という循環関係になっています。」(pp.191-2)
と安冨氏は明快に述べています。この指摘は痛快であり、極めて鋭い。
このような権威に依拠した言説にだまされないためには、どうしたらよいのでしょうか。「東大話法」のやり口を知り、自らがそれを使わないことだ、と安冨氏は言います。
「必要なことは、「東大話法」に代表されるような、日本社会に蔓延する欺瞞話法を鋭く見抜くことです。・・(中略) 個々の人が、自らの中の「東大話法」を見出して取り除くことに努力せねばならず、そうすることではじめて、他人の欺瞞もみぬけるようになります。自分は欺瞞話法を駆使しつつ、他人の欺瞞話法を見抜くというのは無理な相談だからです。」(p.192)
「東大話法」を知ることは、「東大話法」を自らが使用しないためにも必要です。例えば、「「誤解を恐れずに言えば」と言って嘘をつく」のは東大話法規則9に該当します。このような言い方をして、無茶苦茶なことを言った経験がありませんか?
「東大話法」で分析対象となっているのは、大橋弘忠氏、香山リカ氏、東大大学院工学研究科、池田信夫氏、鈴木篤之氏の言説です。また、斑目春樹氏(原子力安全委員会委員長)、近藤駿介氏(原子力委員会委員長)、鈴木達治郎氏(同代理)についても、安冨氏はその傍観者性を批判しています。
なお、この本は、「東大話法」そのものの他に、経済学への批判的見解、エントロピー論、地球温暖化に対する見解なども含まれています。評者とは見解を異にするところもあります。ですが、かといってこの本の価値が失われるわけでは決してありません。なにより、「東大話法」を定式化した安冨氏の努力は高く評価されるべきでしょう。
全体を通して、叙述の仕方は平易です。原子力村=ショッカー、小出裕章氏=仮面ライダーとたとえるなど、感覚的にわかりやすい表現を採用しています。現代社会に生きる私達にとって必読と言えるでしょう。