燃えよ剣 第七巻<完>【DVD】
熱狂的な人気を集めた「燃えよ剣」、当時ファンの間では自主上映会なども
開かれていました。
VHSが出たときも驚きましたがDVDで全巻発売になるとは思いませんでした。
栗塚旭、左右田一平、島田順司の黄金トリオのまさに金字塔的作品です。
当時ビデオなど大変高価だったため、音声だけを録音して楽しんでいたこと
が懐かしく思いだされます。
最終巻の本DVDでは沖田総司の死から五稜郭での最後の戦い、土方の死まで
第23話から第26話まで収録されています。
あらためて本巻を見てみますと江戸試衛館や京都壬生など昔を懐かしむシーン
が多く、少々センチメンタルな雰囲気でもあります。
燃えよ剣で最高に面白いのは第1話「新撰組前夜」から第16話「残月油小路」
までではないかと思いますが、東映TV時代劇のこの傑作を全巻そろえないわけ
にはいきません。
燃えよ剣 第五巻【DVD】
第十五話の劈頭に血風録の永倉新八こと有川正治さんが新新選組の新幹部によってたかって斬り殺されたのにはショックを受けた。鳥羽伏見の闘いでは、同じ組頭の原田左之助(徳大寺伸さん)と共に獅子奮迅の働きをしたのを思えば、如何にバージョンが違うとはいえ遣り切れない。近藤、土方、沖田、井上と旧幹部の殆どが継承されているだけに、役として手落ちがあった訳でもないのに残念でならない。敵役の新見錦を演じた飯沼慧氏も同役で出られたので、是非、継続(徳大寺氏は療養中)させてあげたかった。
この巻のハイライトは、何と言っても外山高士演じる伊東甲子太郎が首に槍を受けて絶命するシーン、そして油の小路での藤堂平助の討ち死シーンだろう。作品としては、血風録の方がより自然体で作られているので格調は高いが、個々の配役ではこの藤堂平助、山南敬助、河合耆三郎、島田魁は、こちらの方が優れている。特に、この作品を見て以来、藤堂といえばこの平沢彰氏の顔しか浮かばないのは、やはりこの作品での存在感がそれだけ高かった証であろう。正に、生涯一度の嵌り役と言っていい。あと、高台寺党で袂を別つ伊東甲子太郎に唯一「タメ口」で話し掛ける篠原泰之進を演じた高角宏暁氏は、なんとなく近藤正臣に似ているので可笑しかった。あと、最終話の「京の町の夜」はいただけない。恐らく、血風録の「あかね雲」を意識して作られたものだろうが、とって付けたような異和感がある。主役?の女の子の悲話を描きたかったのだろうが、とても「あかね雲」の斎藤一と籤売りの女の子には勝てない。これを見ても、やはり斎藤一は左右田一平でないと収まらないという気がする。
最後の松尾監督インタビューは聞き取れたが、本監督の河野寿一氏と脚本家の結束信二氏が亡くなっているのが実に惜しい。もし、制作秘話など聞けたらもっと別の角度から見られたのにと思う。
燃えよ剣(2) [VHS]
『燃えよ剣』は司馬文学の中でも、特に人気がある。
司馬は、それまで影の黒幕的な悪役だった土方歳三に、組織作りの才能を見出し、
節義を貫く男の生き様の美しさを見出した。
現在我々が持っている土方歳三のイメージは、司馬遼太郎によって作られたものである。
司馬は闇の世界から土方歳三を引き出し、人間的な魅力を与え、再生させた。
そんな土方歳三を見事に体現し、生みの親ともいうべき原作者に「君こそ土方」と言わしめたのが、
栗塚旭である。
土方は確かにカッコいいが、それだけではない。大変、線の太いザラザラした手触りがある。
先ず、「マムシ臭い野趣」を感じさせる「バラガキ」であること、封建的な武家組織とは異なる近代的で機能的な戦闘組織を作り出した合理的な頭脳の持ち主であること、豪農出身で俳諧をたしなむ素養を受けつぐ品格のある人間であること、そして己の信じるところを貫く鉄の意志を持った野太い人間であること、最後に生き辛さや不器用さの陰があり、哀愁を感じさせる男であること、である。
栗塚は『新選組血風録』でも鮮やか過ぎるほど鮮やかに、土方を演じた。
しかし一層、人間の幅と力量そして凄みを感じさせるのが、『燃えよ剣』の土方である。
栗塚の土方をみた時、原作の土方がそっくりそのまま、そこに現れたことに驚かざるを得ない。
「栗塚の前に土方なし、栗塚の後に土方なし」言い古された言い方ではあるが、全くその通りである。
「第三話 三条木屋町・紅屋」 局中法度誕生と、日々深まる芹沢派との確執を描く。会津公用人・外島機兵衛の福田豊士、彼は本当に役人だ。その演技には舌を巻く。上手い。
「第四話 里御坊の女」 誠の旗ができる。いよいよ新選組はその陣容を固めつつある。監察山崎の仕事振りに目を見張る。河合の生真面目さも面白い。
燃えよ剣 第六巻【DVD】
もう涙、涙、の連続ですので、涙を拭くものを用意してから見ることをお勧めします。
土方の粋な命令により、原田左之助は恋仲になった女(及びその子)との時間を過します。チョット悲しい展開になりますが。
鳥羽伏見の激戦の最中、永倉新八(黒部進がハヤタ役の人というレッテルを払拭する名演技)が町娘との間に見たほんの一瞬の夢、それは叶う事はありません。
何とかして逃げ延びようとしていた河合某は仲間を逃がす為に勇気を奮い、薩摩兵から賞賛されます。
男らしくありたいと新選組に入った山崎蒸は笑顔で誠の旗を握り締めて最後を迎えます。
流山では、近藤の「俺を自由にさせてくれ」の一言の後、土方の「近藤」の叫び声が虚しく響き渡ります。
追記 21話で中田博久、22話で高峰圭二が、チラッと登場しますが、黒部進と同じシーンで登場しないのが若干残念であります。