クロウフィッシュ・フィエスタ
ニュー・オーリンズのフォンキー・グールー・ピアニスト、フェス
(プロフェッサーの愛称)の遺作にして最高傑作の誉れ高い本作は、
米国内での発表当日に本人が鬼籍に入ってしまうという、まことに
信じ難い知らせまでも伴って届けられたものだった。
それからかれこれ20年が経つが、中身の方はまったく色褪せてい
ないばかりか、いま聴いても実に変幻自在な“フェス節”が堪能で
きる名盤だ。かつてアレン・トゥーサンが、「ロックのバッハ」と
フェスを表したのがよくわかる。
曲目は再演も多いが、しかしギグにおけるフェスの演奏が常にそう
であったように、どの曲も従前とは異なるスタイルでプレイされて
おり、聴きごたえも迫力も十二分。
フェスのオーケストレーションをたっぷりと味わえる名盤中の名盤。
New Orleans Piano: Blues Originals 2
ニューオリンズピアノの開拓者、プロフェッサー・ロングヘアの49年と53年の録音をカップリングしたアルバム。
53年の分(1~5)では、往年のスタイルがすでに確立していることがわかる。グルーヴが素晴らしく、グイグイ引っ張っていく感じがとてもよい。
49年の分は、成長過程がわかる。ブギウギだったり、ジェリー・ロール・モートン風だったり、マルディグラのトラディショナルをストレートにぶつけていたりで、かなり興味深い。録音の悪ささえ目をつぶれば、一晩中でも楽しんでいられる音である。
クロウフィッシュ・フィエスタ(紙ジャケット仕様)
この作品を語る上で、これが遺作であることが何よりも驚異的である。
このノリノリの演奏、どう聞いても死を直前に控えた人のものとは思えない。
ライブ音源を含め作品はいくつもあるが、レコーディングのコンディションや
サボートメンバーを考えると本作が最高傑作と言えるのではないか。私はそう思う。
ニューオリンズの音楽を聴く入門盤としてももってこいだと思う。
このCDのライナー・ノーツにあったワイルド・マグノリアスの山岸潤史氏の言葉、
「ワシ本はよう読まんけど、あれは1日で読んだわ。ムチャおもろいで」。
というのはこのレコーディングにも深く関わったドクター・ジョンの自伝
「フードゥー・ムーンの下で」を絶賛した言葉。フェスについてもかなり詳しく
書かれています。このCDと併せて楽しめばニューオリンズの香りを堪能できるのでは
ないでしょうか。