イタチのノロイとの戦いを終えて、田舎に戻ったガンバにシジンの恋人を探してくれと仲間がやって来た、さあ新しい冒険だ。冒険物語だけでない何か伝わる物があります。ぜひ読んで見て下さい。ガンバとカワウソの冒険 (岩波少年文庫)
アニメ『ガンバの冒険』の原作『冒険者たち』、そしてその姉妹編『グリックの冒険』『ガンバとカワウソの冒険』の著者による28年ぶりの書き下ろし物語。
時は1988年4月、主人公は小学校を卒業して中学入学前の斎藤哲夫。
春休みに父の故郷である長岡に父と一緒に行く予定だったが、父の仕事の都合で一人で旅立つことになる。そこで、哲夫は、様々な人に出会い、当初は興味がなかった長岡に引き込まれていく。「タイム・ファンタジー」とされているように、いわゆるSFのタイムトラベルとは違っており、『時をかける少女』と『トムは真夜中の庭で』を混ぜたような哲夫の“トリップ”は、現実と夢想、現在と過去の世界を彷徨い、奇妙なリアリティを作り上げている。携帯電話普及前の時代なので、細かい電話のやり取りがアクセントになっている。
「あとがき」によると、28年前に自伝的小説として書きだしたもののとん挫していたが、著者自身の2年前のある経験が影響し、違った形で結実したとのこと。たしかに、設定などを見る限りは自伝小説とは言えないだろうが、長岡を歩く哲夫が見出していくのは、著者自身の姿のように思えてならない。
幼い頃、ガンバを見た記憶があるが、ノロイが怖かった印象だけが残っていた。
何となく、もう一度ガンバを見たいなあと思っていたときに、DVDを見つけて購入。
見始めたばかりだが、やっぱりノロイは怖い。
映画やアニメに精通しているわけではないが、ノロイほど、生命の琴線に触れる恐怖を感じるキャラクターを知らない。
まだ娘が小さいので、一緒に見るのには躊躇がある。
鳥や猫は、命を狙って襲ってくる敵という描写で徹底している。
というかネズミ以外の生物は、人間も含めて非常にグロテスクな描写になっている。
これはある意味、非常にリアルなネズミ目線といえるだろう。
熊でも猫でもウサギでもみんなお友達、的な童話世界とは違う。
タイトルの音楽は最高。
ここを見た娘も、ガンバ!などとその場で覚えた。
それに対して、エンディングの音楽は、今の子供向けアニメでは考えられない世界観。
自然の描写などが、妻いわくだが、つげ義春のような雰囲気。
最近のアニメと比べると、ガンバの時代のアニメは、太平洋戦争の影響が濃い。
ガンバのストーリーにも、捨てられた軍艦が登場する。
この軍艦は、日本海軍の戦艦榛名、伊勢、日向を彷彿とさせる。
戦争末期に瀬戸内海で敵の空襲により大破着底し、戦後もしばらくそのまま放置されていた。
ガンバの、破滅への独特の恐怖感、そこに立ち向かうネズミの姿は、日本人の戦争体験と重なるのかもしれない。
ガンバのキャラクターが良い。
うまくいかなくても誰かを責め立てることもなく、何の逡巡もなく他人のためにがんばる。
このきっぷのよさは、見習いたい。
まあ、自分への自信がそうさせるのだろう。
画質や音質も、私にとっては十分。
子供には怖すぎるかもしれないが、むしろ大人が成長できる作品ではないか。
名作。文句なし。
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