この作品の作られた86年は「ターミネーター」(84)の大ヒットに伴って類似した映画が大量生産された時代ですが、このヒッチャーもその影響が無いと言ったら嘘になりますが、充分オリジナルティを持っており、成功した数少ない作品でしょう。 物語は車の陸送中(アメリカならではのジョブ)の青年が、あるヒッチハイカーを乗せたことから始まると言う、とんでもなく些細な出来事がきっかけとなり展開していきます。一度自分の手の中から逃れた青年に何かを感じたのか、執拗に彼をなぶるようにしながら徐々に追い詰めていくヒッチハイカー。
理由のわからない彼の追跡。罪を着せられ警察にも追われる羽目に陥った青年は心身ともに限界に追い詰められていく様子が悲壮感と恐怖を盛り上げます。
その恐怖を見事に再現させるのはルトガー・ハウアー。彼の静なるたたずまい。声を荒げるでもなく、銃を乱射しまくるわけでもなく、たんたんと主人公を追い詰めていくキャラクターは不気味さの極致。この映画の成功は彼の存在無くして成り立たなかったでしょう。
最後は一応ハッピーエンド(なのか!?)となるのですが、クレジットの流れるバックの映像には今後に訪れる苦悩を暗示しているようで、後味の悪さは否めませんので、観賞の際は自身の精神状態にご注意を。人によってはかなり参ると思います。
またこの作品には若かりし頃(失礼かな。笑)のジェニファー・ジェイソン・リーが出演しており、役柄もよく彼女のファンなら要チェックですよ。