学生時代を思い出す淡い物語。大人が観たら学生時代を思い起こす。
わずか何両かの車両とそこで流れる時間の中には多くのエピソードが詰まっている。そこには人々の喜怒哀楽が常にある。この作品はそこを見事にすくいあげている。大きな展開はないけどそこに魅力がある。ありふれた日常の数々を見事に映し出しているのだ。ウェディングドレス姿の乗客はいないだろうけど。 登場人物が多いが1人1人のエピソードを丁寧に描いているので混乱する心配も無用だ。季節を越え描いているのもいい。その間に変わったことやそうでないことがきっちり描かれていて。回想シーンが中心なのだがそれが続くのかと思うと、別の演出をしてくる。このあたりも非常にうまい。観ている間は笑ったり、少しグスンときたり。実に映画らしい映画だ。 女優陣がとくに頑張っていた。なかでも宮本信子は好演だった。
篠原哲雄監督は、現代の日本映画界では最上位に位置する監督のひとりだ。どの作品も大仰なクライマックスがあるわけでもないのに、観客を心地よくさせてくれる。本作もそんな一本だった。ケータイ小説の映画化っていうのは、今までどうも成功作が少ない。これは若年層に取り入るような作り方をしているからであって、オトナが観れるレベルではなかった、ということだ。そこはさすがに篠原組だけあり、きちんと大人の鑑賞に堪えうるシャシンに仕上げており、かつ内容も、一歩間違えるとB級Vシネになりそうな素材を上手く料理してあった。また石垣島や大阪のロケーションも安っぽさ感がなくてよい。篠原組で南の島、というと「深呼吸の必要」だが、あの暖かい雰囲気は今回も健在だった。主演の杉野希妃と細田よしひこの「か弱い」感じを出した演技もよかったし。杉野は映画本編は少ないようだが、もっと映画にチャレンジしてもいいのではないか。今回も「カラダを売る商売」と「恋愛」の狭間を必死に表現していたから、真実味があった。早く次が見て観たい女優である。特典のメイキングはもう少し充実させてほしかったが。全体的には星3つ。
aikoのホームはまるで今津北線のホームに電車が滑り込むような軽快さで映画の後の爽やかな感動を呼ぶから秀逸。
中谷美紀の翔子の場面から映画は始まるわけですが、一人ひとりの登場人物が深いかかわりは持たずとも、各場面、今津北線の各駅でお互いの人生にリンクして、物語が進むあたりが、人間の縁みたいなものを今津北線を通じて、電車の中のあるいはその沿線でのエピソードとして語られるわけであり、基本は小説の中のイメージを壊さずに映像化されるのが非常によかった。
阪急神戸線と京都線経由で大学に通った経験がありますが、改めて小林駅を訪れてみて、イズミヤや翔子と小学生のショウコが座ったベンチを見て、ぜひこの町に住んでみたいと思わせるような、閑静な住宅地が舞台となったことに、この映画の人間というものに対する優しさを感じました。
映画はちょっと、ほろりとします。
でも、終着駅は、きっと笑顔。たぶんそうなると思います。
私は、今から30年ほど前に阪急電車のとある駅を降りた所に通っていた高校がありました。
なので毎日、乗っていたのですが何とも味のある電車なのです。
当時は男子校も女子校も、サラリーマンの方も今より、ずっと人の数は多く満員電車でした。
特に仁川駅、小林駅は友人が住んでいた事もあり懐かしくて、頭の中が、あの頃に戻ったかのようにフワッとしました。
この映画に出演している方々は皆さん素晴らしい役者さんなのですが、一般の方にも利用者の人の数だけ物語はあると思います。
関西以外で阪急電車を利用したことのない方には、感情移入は難しいかもしれませんが、それは特別に変わったことではなく、皆さんの住んでる場所でも普通に起こる物語なのではないでしょうか‥
通勤、通学の時に名前も知らないけれど毎日、会う人たち。 その人の数だけ物語と奇跡は起こるのだと思います。 そんな、特別ではないけれど、あたりまえの日常を描いた素晴らしい作品でした。
そして…私の30年の月日が流れていきました。
追記
阪急電車の、ほとんど各駅にある阪急そばという立ち食いそば屋さんがあるのですが、安くて最高においしいですよ。もちろん関西風味ですが… 機会がありましたら一度、お試し下さい。
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