「クリスタルサイエンス」「ハイドウナン」の藤崎信吾は、米国メリーランド大学で海洋学を修めた本物の科学に裏付けされた本格的SF作家である。その著者が、本書では民話の故郷「遠野」における不思議な物語を巧みなストーリー展開と秀逸な表現力で描いている。 著者のことだから、民話の不思議な現象を科学的に解明するのか?と思い読み始めたが、淡々と民話の世界に入って行ったのは意外ではあったが、読後は科学を突き詰めた著者ならではのメッセージと妙に納得させられた。 SF作家藤崎信吾が、満を持して新た境地に挑戦した意欲作である。これからの著者の活動に大いに期待が高まる。
「コスモ・ノーティス」のメタモルフォーゼ世界、「星に願いを」のサイバーパンク…実に軽やかに異世界を描き分ける。そこに必ず織り込まれる[人の思い]。 「星窪」でモチーフの一つとなった異色の日本画家・田中一村の「アダンの実」を、私も回顧展で息をのんで観た。「ハイドゥナン」の表紙の意味がわかってうれしい。
リアルすぎてなんだか恐ろしく感じた。
物理世界と仮想世界の境界があいまいになった近未来。
物理世界に生まれた人間サヤはアバターを媒介して仮想世界にアクセスし、 仮想世界で生まれた「人間」である人工知能は生身の人間を「ウエットウエア」 として使い、物理世界にアクセスする。
物理世界も仮想世界もともに「現実」である。
はたして、人間と同じ思考プロセスを持つようになった人工知能は「人間」と 言えるのか?
人間とは、いったい何なのか。
そんな事を考えながら読みました。
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