とうとう買ってしまいました。
中国にまだ旅行者が自由には入れなかった時代の今は失われつつある趣のある美しい現地の映像がたっぷりと楽しめます。
でもちょっと残念なのはデジタルリマスターとあったけど、画像があまり綺麗じゃないように思えます。
中国の歴史が好きなのでシリーズ通して大変面白く読めました。 私がおすすめするのは漢の武帝とその息子、戻太子にまつわる悲劇から宣帝時代までのくだりです。 さまざまな伏線と謀略とが入り混じってすごく面白いのです。 登場人物が多い上に長い年月のことを書いていますので、人物の掘り下げなどは多くないのですが、このシリーズでは人物を描くことを目的としていませんので問題ありません。 むしろすっきりしていて良いくらいです。 時代の大きな流れ、その中で象徴的ともいえるエピソードの数々を作者の想像を交えて書いているのですから、人物に感情移入したい人には向いていません。 客観的に時代の流れを見ることができ、歴史に造詣が深くない人にも楽しく読めます。決して堅苦しくありません。 エピソードの大半は皇帝やその周辺の人々のスキャンダルなんですから…。 この巻の目玉はやはり、武帝の時代だろうと思います。 特に霍去病は人気のある武将ですからご存知の方もいると思います。 また、悲劇の将軍李陵や彼を弁護した為に罰せられた司馬遷など見所は盛りだくさんです。 ぜひ、読んでみてください。
やはりこの作者の中国史の本は素晴しい。小説仕立てで語り口が面白かった小説十八史略に比べると、豊富な資料に作者の論理的な思考を加えて作成された本書は本格的な本という感じを持ちますが、読者に中国史の醍醐味をわかってもらおうという作者の熱意が感じられ、学者の本のような読みにくさは微塵もありません。中でもこの第1巻は小説十八史略では物足りなかった古代史を考古学の時代から詳しく書き起こしており、その記載は実に豊富です。小説十八史略(一)では同書の半分足らずで春秋時代までをカバーしていますが、本書は丸々一冊を費やしています。本書の冒頭には青銅器・殷墟などのカラー写真、本文中にも土器の写真、殷周・春秋戦国期の青銅器の絵、甲骨文や金文の図解・写真が含まれ、それらを眺めているだけでも楽しくなります。詩経や竹書紀年などからの引用も多く、読者を古代史に的確に案内してくれます。圧巻は、ト辞と史記とで、殷の王統図がほとんど一致するという事実。中華民族はいかに歴史を大切にする民族であるかを改めて認識し、感服しました。本書が記されて以降も考古学上の発見は数多くありますから、もし本書を改訂する機会があるとすれば、もっと凄い本になるでしょう。
私がこの小説を手に取ったのは、横山光輝の「三国志」以降、あの英雄たちの末路は?と軽く興味を持ったことから。
その後の悲惨な歴史から近代まで、それ以前の殷王朝の崩壊や周王朝の成立、春秋戦国など楽しく読めました。
語り口も軽妙で、非常に簡単に読める小説で、中学生くらいでも十分楽しめる、オモシロ小説です。
もし、お子さんがゲームでも漫画でも良いですから、三国志や春秋戦国といった戦国ものや歴史ものに興味を持ったら、プレゼントしてみてはいかがでしょうか。
ただ、これが常に正しい歴史の回答であるというわけではないので、いろいろな作品をお読みになることをお勧めします。
小説ですから美化されていることも多数ありますし、妲己が実は紂王を滅ぼす口実のため送り込まれたスパイであった、など、独自の珍解釈などもあり、逆に楽しくなります。
実際、3000年近くの前の事件に関わった人間の思い、人間関係など、もはやわからないのですから、どのようにでも解釈できます。
実際はとんでもないインチキ野郎でも後世の小説では英雄にされたり、誠実な人でもマキャベリみたいな陰謀家にされてしまうこともあるのですから。
だからこそいろいろなロマンチシズムあふれるドラマが書けるのです。
これを読んでおくと、とりあえず神話時代から近代までひとまわしできるので、必読といえます。
ワタクシ、アヘン戦争について特に詳しいわけでも、格別の関心を抱いていたわけでもなく、高校時代に習ったきりです(それさえ、よく覚えていない)。ただフッと、「アヘン戦争って、どんな戦争だったんだろう…」という疑念がわいて本書を手に取っただけの人間です。ですから1971年に単行本刊行された本書が、現在の研究水準から見てどう評価されるべきかについては、全く無知です。
と、言い訳した上で感想を述べれば、読みやすく、私が求める程度の知識を十分に与えてくれました(むしろ詳しすぎないところが良い)。以前から疑問だった、清が海禁政策と対外交易をどう両立させていたのかについても、イメージを得ることができました。英国にとってアヘンによる収益は、ベンガル政庁を支えるのに不可欠だったという指摘(p235)も興味深かったですし、林則徐が更迭後、太平天国の乱で再び欽差大臣に任命され、しかし赴任途上で没したなんて話も初めて知りました。不謹慎な言い方ですが、中国史のドラマを楽しみつつ勉強できました。
ただ細かいことながら、学海堂という由緒ある学校の学長・教授連が貿易商たちに籠絡されてアヘン弛禁論を唱えたのではと推測する件り(p103)で、これを「産学協同」と呼んでいるのには、ちょっと笑いました。「曲学阿世」の方がまだいいのでは? と身の程知らずにも思うのですが…もっと良い言葉があるかもしれません。
ちなみに終章の後に付された「それからの林則徐」は、元は1980年に単独で発表された文章で、やや著者の肩の力が抜けている印象。当時の世相に言及する部分が散見されて時代を感じさせましたが、これはこれで味わいでした。
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