ガンダムは一環してスペースノイドvsアースノイドの物語であるが、
これが革新派vs保守派であり、ジオンvs連邦であり、エゥーゴvsティターンズであり、
オールドタイプvsニュータイプの構図であった。その中に子供vs大人の構図も
常に存在し、ニュータイプは常に子供である。
この表現は間違っているわけではもちろんないし、子供向けロボットアニメであれば、
子供達の共感を得るため、やむをえない。
そんなガンダムシリーズにあって本作は大人のためのガンダムである。
主人公、バナージ・リンクスこそ子供だが、その周りを固める大人たちが魅力的だ。
今までのガンダムのように、ただ古い考えを持った保守派の大人として描かれているのではなく、
それぞれに事情があり、立場があり、秩序を守ろうとする大人。
このスタンスでガンダムを描くことが、これほど面白く感じるとは思わなかった。
ガンダムは成長する。
我々ガンダムを見て育った世代とともに。
蛇足ではあるが、いっそのこと主人公も30歳過ぎて急に覚醒した悩めるニュータイプにしてもおもしろかったかも知れない。
今までは手に汗握る艦隊戦やMS戦なども楽しめる、
エンターテイメント的部分も多くありましたが、
本巻では大部分が、非常に濃密な人間ドラマに割かれています。
中でも、各人物の過去を遡り、現状との因果関係が判明する部分が
いくつかあるのですが、それは当然、一年戦争からシャアの反乱に
至る過程で、各々がどのように状況に関わっていたかを辿る事にもなり、
各人物像に厚みを持たせています。
それらの登場人物達が、複雑に絡み合いながら展開するドラマが、
本巻の最大の見所ではないでしょうか。
特に前巻で、自らの『義務と責任』に目覚め、ミネバと共に
大胆な行動に出たリディが、連邦議員である父親と再開した際の
一連のシーンが、最も印象に残りました。
ただ、物語は一年戦争以降の出来事にあった背景や意味などを
丁寧に邂逅及び解説しつつ進められていますので、
それを、知識欲を満たす喜びと感じるか、複雑でややこしいと感じるかは、
読者次第かも知れません。
当然、多くのファンは前者かと思いますが…。
ちなみに僕は「あれ?どうだったっけな…」と読み返す事しばしば(笑)。
さて、ストーリーがいよいよ『箱』の核心部分に近付きつつあるのは
間違いないようですが、もちろんまだ判然とはせず、
むしろ、ますます謎は深まっていきます。
一年戦争に始まった壮大なサーガを、どうやって総括するのか?
今後も非常に楽しみですが、企画段階から安彦氏が参加していた
事もあり(本巻も表紙のみ書いています)、大きな期待が寄せられる反面、
生半可な物は容赦なく切り捨てられるのではないかと思われていた中、
コアなファンをここまで引き付ける作者の筆力には脱帽です。
作品も中盤に入ってまいりました。すっかりこのシリーズに魅せられております。
小説未読の私でも物語の展開が原作に比べもの凄く速いということはわかりますが、その速さにも慣れてきました。これだけコンパクトなのにこんなにも面白い作品になっているのですから、製作陣の苦労も相当なものだと思います。
優れたスタッフに優れた作品。それだけに悔しく惜しいと思えるところがないわけではありません。
個人的なことかもしれませんが、どうやら私はキャラクターに対する思い入れが出来るまでにある程度時間が必要な人間のようです。
ファーストガンダムではランバ・ラルがアムロにとって心理学で言う象徴的な父のようなものだったと思うのですが、本作では軍という名の社会の歯車というよりわかりやすい形で、ダグザ中佐が思春期のバナージにとってそういう父的な存在になっている気がします(「自分に息子でもいれば…」という中佐の言葉もありますし)。
であれば、中佐とバナージのぶつかり合い、そしてそこから生まれるお互いの心の動きや葛藤を、もう少し見たかった。
またギルボアの家族の描写も、その家族を自分の目で見て知るバナージも、もう少し見たかった。
それらをもう少し見ることが出来ていれば、中佐やギルボアが最後ああいう形になった時、作品を見る側としてもバナージに気持ちを重ねてもっと辛さや心の痛みが味わえたと思うのです。
こういった優れた作品をテレビではしっかりとフルで流せないのが現状であるならば、私はこの現状が悔しくてなりません。
私はNHKの大河ドラマも現在(惰性で)見ているのですが、今放送されている薄い戦国大河に比べると、このガンダムの方がよっぽど重厚な「戦国の大河ドラマ」です。
極めて限られた枠の中でもこのように素晴らしい作品に仕上げてみせるスタッフが、余裕をもって作品を作り上げることが出来る時代は来ないものかと思う次第です。
注:(前のレビューが性急だったので、再編集の上での投稿です)
映像の密度が異常なまでにすごいですね。
小説版のパラオ攻略戦とラプラスの亡霊は膨大な内容なのに、
この時間で凝縮できるなんて編集の神技だと思いました。
「尺の長さが足らず、はしょり過ぎだ」という意見を多く見かけましたが
気鋭のアニメーターが結集して60分物のOVAの、制約の限界に挑んでいます。
もう4回は繰り返して観ましたが心理描写と作画の技術も、エピソードを
重ねるごとに進化していることを感じることができる・・そう思います。
今まではエンディングテーマといえばスタッフロールのみでしたが
映像を同調させて、テーマ曲の歌詞と映像の同調で物語を紡ぐという
新しい試みもなされています。
福井氏の小説を読んで、このエピソードのはしょり方に不満を
持っている方の意見も散見しますが、この映像は氏が週一のペースで
製作会議に参加しながら「映像では省いてもいい」点を立会いの上で
決定して行われているものです。
昨今は嫌われがちな”重厚なテーマ”に挑んで気を吐いている良作だと
自分は思っています。
ガンプラ初心者なので全塗装は出来ず、チタニウムフィニッシュを買いました。 丁寧に作ろうと思えば思うほどゲート跡が気になって、レビューに書かれていた 「ゲート跡にはマッキ―赤!」を思い出し、塗ってみると思いのほか目立たなく なりました。それでも気になる所は別売りの1/144 シナンジュ用のデカールをゲ ート跡に貼りました。シールド・胸・袖の紋章は金色で筆塗りをしました。はみ 出しても塗料が乾く前なら爪楊枝で擦ると目立たなくなります。最後はトップコ ート(光沢)で仕上げました。チタニウムフィニッシュ+別売りデカールで高級 感のあるシナンジュになりました。
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