そもそも小学生が主人公なんだから、
これまでの作品に見られた「青春の葛藤」とやらを求めることが間違っている。
むしろ、小学生なりの心情を上手く描くことに成功していると思う。
私は作者の他の作品も全て読んでいるが、この漫画も普通に読めた。面白かった。
かつての作者の面影を引きずっていないレビューを参考にした方がよい。
たった一度の十七歳が始まる。
という文章から始まるこの漫画。
淀川の近くの厚揚げ工場で働く17歳の女の子の成長を描いた漫画です。
かつて自分の中にも存在していた、ほんわりとしたやわらかな気持ちが、
描かれています。
上下の電車がすれ違うタイミングに願い事を叫び終われば、願いが叶うというジンクスに、
緊張しながらも、どうにか叫ぶことができた主人公。
その「友達がほしい」という願いは、その日のうちに叶います。
同い年の、きれいで、無口な女の子が工場にアルバイトとしてやってくるのです。
僕も昔、塾の帰り道、人気の少ない池沿いの道を自転車で走っているとき、
ここで好きなあの子の名前を大きな声で、出せる精一杯の声で叫べたら、
たぶん両思いになれる、なんてジンクスをかってに作ったこともあります。
もちろん叫びました。
でも恥ずかしくて、普通に話す声よりちょっと大きいくらいの声でしか名前を叫べませんでした。
そんなジンクスなんて自分で作ったものですし、田舎なのでどうせ誰もいない。
叫んだってぜんぜんかまわないのに、自分の気持ちが本物だからこそ、恥ずかしくて叫べない。
そんな時期を青春と呼ぶのでしょうか。
そうだとすると、僕はもう青春をとっくにすぎてしまいました。
たった一度の十七歳ではなくなってしまいましたが、
たった一度の人生を今生きています。
過去、そして今、明日から、自分が少しだけ好きになれる漫画かもしれません。
まだまだ主人公の物語は続くので、一巻しかでていない今のうちから見守ってあげようじゃありませんか。
打たれ弱いキャラの心情を垂れ流すということと 人間の細やかな心の機微を描くということは似ているようで違うと思う。
「はるの/よるの/ようだ」が大学時のデビュー作と知って大ショック。 言葉の力が凄い。 人間の打算的なところ。そのずるさが描かれていて痛い。
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