☆カタストロフィの世界を舞台に人類存亡を懸けて戦う国連軍の中尉である気ままで、楽天家の突撃娘〈ノーラ・スコラ〉の大活躍を描くSFアクションである。ノーラの明るいキュートな天然キャラクターぶりと、シリアスな物語とが巧妙に程よくミックスされた展開が楽しいSFアクションであるが、お話は決して甘ったるいプロットではない。政治、人類破滅の危機、コンピュータによる支配、戦争問題など、単なるエンターテイメントにしていないのが、この作品の最大の魅力であり、御厨マンガの真骨頂だろう。無論、抜群の緻密力で描き込まれた武器&機械類、宇宙戦艦、巨大原始力空母が、ストーリーにリアリティーを与えている。アイデアも誠に秀逸である。好きな漫画家の1人である、オールラウンドプレイヤーの御厨さと美氏は、『裂けたパスポート』、『闇の伝説』、等の作品を読んでもわかりますが、どんなジャンルでも描ける万能漫画家だと思いますし、骨太なテーマを追究し続ける挑戦的な意欲作が意外に多い。画力もト書きを思わせる繊細でリアルな描写も目を見張る程、素晴らしい。御厨さと美氏初期の代表作である、ノーラはSF劇画の頂点を極めた最高の大傑作デス!☆。
1980年というから、今から27年前!立ち読みしたあの本を、何度買っておくべきだったと後悔したことか!あの名作を、あの巨匠が、他の人物に描くことを許すなんて、余程、その人物の力を買っていないとあり得ないことですよね・・・。
当時、巨匠と言われつつ、手塚治虫としての絵としてこれからの進め方にもしかしたら悩まれていたかも知れぬ人物と、当時、若手の劇画画力No.1として期待された人物の奇跡のコラボレーション!御厨氏は、当時、ノーラの箱舟やら、裂けた旅券でその画力で知られていましたが、映画「火の鳥2772愛のコスモゾーン」では、あくまでメカデザインとして参加。(アニメ自身も、「口の動き方が、手塚アニメの割には、妙に実写ぽい所が、違和感。」という評価があったように記憶。この頃は、皆試行錯誤の頃だったのかも・・・。) しかし、その御厨氏が劇画家として、劇画のページ数のしがらみに縛られつつも、一つの作品としてこの作品を仕上げています。掲載されたインタビューを見ると、「やはり手塚氏は、御厨氏にとっても神様なのだったな。」とは思いますが、それでも、油が乗って、これからも伸びていくのだろうなと思われた頃の御厨氏の劇画が拝見できるのはファンとしては有難い。
初見の方も、手塚氏が、モンスターあるいは美しい火の鳥の二面で描く火の鳥が、劇画風に描くとこうなるのかという一例を見ることができるだけでも一見の価値ありかと思います。
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