読後の感想としてはたった一言、吉田純子の『あさましさ』だけが印象に残った。 犯行の原点も動機も、全て吉田純子の金銭欲、性欲の『あさましさ』に他の3人が女性的であったために振り回されたように思った。 それにしても、どうしてこんなにイケてない吉田純子を『先生』や『松風』という架空の人物がぞっこんだとか、はたまた共犯者のご主人が『襲う計画』を立てているなどを他の3人が信じてしまったのだろう? 信じ込んだほうがラクだからか?疑問を呈してしまうと、吉田純子の逆鱗に触れ、怖いから? 事件そのものは、複雑というよりむしろ単純そのもので安っぽい小説よりさらに安っぽい仕立てだ。これが事実でなかったら、誰もこんな小説買わないと思う。それほど出来がよろしくない事件なのだ。 それでも、事件として成り立ってしまうのだから、『事実は小説より奇なり』とはよく言ったものだと思う。 何の落ち度も無く、信じていた奥さんの手にかかってしまったご主人のご冥福を祈りたい。
割合と丁寧に書かれたノンフィクションなのだろうと思う。しかしこういう事件によくあることだが、結果の重大性とかけ離れた犯人たちのあまりの浅薄さと低俗さに、途中で読むのがうんざりしてきた。これは筆者の責任ではないとは思うが。 こんな原始的な事件が現代の日本で起きるという驚きと、実際の刑事事件というのはやはりこんなものかも、というなんだかあきれ果てるしかない読後感で、むなしく腹立たしいばかりです。
犯罪ノンフィクションはよく読んでいておぞましさには慣れているつもりだったが今回は何度か本を閉じずにはいられなかった。人の心を操り、小さな女の子に弟を殺させ遺体の解体、遺棄までさせる松永の行為。裁判が始まってからも全く反省の見られない彼の闇はどれほどのものなのだろうか。(読後『愛犬家連続殺人事件』を読んだが主犯の関根がかすんで見えたほどだ。)そして悪魔に魅入られた緒方。彼女はこの事件の加害者であり松永の闇の中でのたうち回る被害者ともいえる。松永と離れる事で人の心を取り戻せた緒方の姿はこの惨劇の結末の始まりであり、彼女の魂は救われたのだと感じ涙が出た。
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