雪山は単なるベタな都市伝説的な怖い話を より臨場感あふれるリアルな惨劇に仕上げている。 一見頼りになる人間までもが 狂ってしまうという設定は秀逸だった。 忠臣蔵はコメディ系だけど、 他のチェスや結婚よりは中々深い話だと思う。
本書は、歴史の教科書でも出てくる有名な20の暴言、例えば、 「平家に非ざる者は、人に非ず」 「日出づる処の天子、日没する処の天子に〜」 などを切り口として、歴史を紐解いていく内容です。
その暴言が発せられた時代背景や、その人物が丁寧でユーモアのある説明で書かれていたので、 自分が知らない時代のことも、興味深く読めました。 作者の説明が論理的で、説明の根拠が明確なので、 その暴言が、本人の自負から発せられたのか、政敵が半ば創作したのか、 などの結論も納得できました。
この本で、歴史を多角的に知ることの面白さを感じました。 歴史を学ぶ意義の一つは、例えば、 「現代の報道や政治家の言葉も、鵜呑みにすると、過去に犯した歴史の失敗を再度、犯すことになるのでは?」 と疑問を抱くことにあるかもしれません。 作者の近代の歴史認識に異議がある人もいるかもしれませんが、 歴史を別の角度から眺める点では、誰が読んでも有意義な本です。
タイトル作が最も面白くてその他は好き好きという点では、他のレビューと同じ意見です。ただ、国語という教科は好きでなかったものの、無類の本好きで国語のテスト(全国模試ですね)にはやたら強かったものとして一言。 この必勝法には幾つもの「本物の必勝法」のエッセンスが隠れています。単なるジョークや誇張ではなく、ありがちな国語の試験問題をベースに、その問題を解くための本当に効率の良い思考方法をもとにしているからこその面白さが感じられます。 結局のところ、本当にその人の国語能力(文章表現力・語彙力・読解力など)を知りたければ、論文を書かせるなり面接するなり、即興でスピーチさせるなりしたほうが良いわけで、その意味ではこんな重箱をつついたような試験問題に右往左往している教師・受験生を笑い飛ばしているとも思います。 それはともかくとして、軽妙なテンポ、独創的な着眼点、風刺、実体験に基づいた真実の土台がブレンドされた、極上の娯楽短編小説だと思います。国語が得意だった人には大喜び。そうでない人にもそれなりに楽しめる本だと思いますよ。
一読するだけで、日本文学史がじつにおもしろく理解できる。清水義範さんは、やさしくわかりやすい文章を書く達人といっていいだろう(難しく書こうと思えば難しく書け、易しく書こうと思えば易しく書ける、そんな人はあまり多くないが、まさしく清水氏はその1人だ)。 本書は、古典から現代文学までをたどっているのだが、なかなか古典に関心をもてず、少しも理解していなかった者(私)でも、「なぜ『源氏物語』が偉大な文学なのか」がわかる。本書はそこからスタートして現代までの流れを解説する。 『源氏物語』『枕草子』『方丈記』『徒然草』などについて、本来、日本人なら(読んでいなくても)教養として知っておくべきことを易しく教えてくれる。明治以降は、学校の教科書に出てくる作家をとりあげているのが、それに対する清水氏なりの評価(とらえ方)が出ている点がまた面白い。 「漱石はたった一人で日本の現代文学の土台を完成させてしまった」「鴎外は知的すぎてあまり面白くなく、読む楽しみがどうも少ない」「芥川の小説は知性で書かれているが故に、時が流れても古びるということがない」「自然主義文学がいびつな文学観をつくってしまった」「白樺派は名門校に通うお坊っちゃまたちの、変な文学」「二人(太宰と三島)の共通性は、徹底的に自分にしか興味のないところだ」などなど。 高校生が日本文学史を学ぶのなら、ぜひ副読本として本書を使うことをすすめる。『身もフタもない日本文学史』というタイトルで手に取ることをためらう人もいるかもしれない。それが残念だ。『おもしろくっても日本文学史』あるいは『日本文学史がおもしろいほどわかる本』、そんな内容である。
書名となっているのは、直訳調の翻訳をおちょくった作品。めちゃめちゃ笑える。しかし、特に理系の専門書には、似たような訳文が時々登場するから笑ってばかりもいられないかもしれない。
その他の作品も独特の視点に立った、ユニークな作品ぞろい。言葉が好きの人なら絶対に面白いと思う。
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