ピュアフルアンソロジーシリーズを装画担当の早川司寿乃さん目当てで買っています。
早川さんは主に書籍やCDの装丁をされることの多いイラストレーターですが、いくつかのオリジナル創作もあります。
今から20年以上も前に早川さんのイラストを初めて見たとき、あまりの心地よさにとりこになってしまいました。
懐かしい風景を、非現実的な構図に組みなおし、シンプルな線とやさしい彩色で夢の中の風景のように再構築される独特のもので、一時期結構人気を博されていました。
このように過去形にしてしまうのは失礼なのですが、最近では装画以外ではなかなかお目にかかれなくなっていて、さびしい思いをしております。
かつてはコミックファンタジー誌で独特の詩情あふれる創作もされていて、林静一の再来かとばかりに期待していたのですが・・・
本アンソロジーシリーズでも、大変個性的で美しい表紙をいくつも担当されています。
そして、この本ではいよいよ創作も掲載されました。
実のところ、かつてコミックファンタジーに掲載されたものの加筆版なので少し残念ではあるのですが、編者の目の付け所に拍手を送りたいと思います。
高校生、凪が活躍するシリーズ第1作目『カカオ80%の夏』を読んで、永井するみさんのファンになりました♪まさか続編が出るとは思ってなかったので、嬉しい限りです(^^) 今回もとっても楽しく読みました!読み終えるのが勿体無かった、、。凪のクールだけど女の子らしい一面が垣間見える性格が好きです。謎解きはもちろん、マスターと凪がどうなるのか今後の展開も非常楽しみです☆早くも次回作が待ち遠しいなぁ♪
人材派遣会社を経営する由希子は、42歳の独身。恋人とは不倫。帰っていく恋人を見送り、出張ホストのテルで寂しさを埋める。彼女の会社に登録し、恋人の会社に派遣している、ある子持ちの離婚女性のトラブルが徐々に波紋を広げていき...
社会的には成功を収めているものの、寂しい女性である由紀子と、離婚し、子供を抱えながらも前夫のせいで定職に着くこともままならない、ありさ。成功者であるはずの由紀子は、ありさに羨望を覚えたり、かといって、恋人に対して自分の気持ちをぶつけることもできない。プライベートな部分で非常に不器用な由紀子を通して、女性の気持ちが非常に細やかに表現されており、するりと読むことができる。ラストも現代社会の暗部を見るようで鮮やか。この後どうなるんだろう、と想像させてしまうぐらい、物語にひきこまれてしまう。他の作品も読んでみたいと思わせる作品でした。
永井するみさんのミステリーは独特で、知ってからはずっと読んでいたから、遺作となったのが残念だ。 最後の作品は、短編集。4つの物語が一部ずつつながって展開する。どれも、綴られた日記を読む形で展開するが、読者が日記に騙される。故意に嘘の日記を綴っている場合もあるけど、日記を書いている本人と周りの現状認識に大きな差異があって、結果として読者が誤認する場合もある。 4篇めが1篇めに戻ってないけど、連載途中ということで、終結する時は1篇めに戻ってくるはずだったのでは?
すぐれた文章にある一定のテンポがあるのは当然なのかもしれないが、この小説には、常に落ちるリズムが付きまとう。
スマートな作家さんなのだろう。 どの程度彼女自身を忍ばせているのかはわからないが、彼女の描き出す登場人物は常にドライで強く凛々しく、そうして美しい。 それぞれの女性の姿形の描写は少ないはずなのに、なぜか一定のテンポが、彼女たちが同じ匂いの女性であると告げている。
不倫、という現象をクールに切り出し、恐ろしい程にドライに強く、美しく仕上げたこの作品は、まるで精緻な砂糖菓子のようだ。 美しく、脆く、口に運んで満たされても、決してそれだけではカラダを作ることのできない、虚構の食事。 さくさくさく、甘い毒が体を蝕む。 どんなに満たされていると満足したふりをしても、それは単なる虚構。
どんな修羅場の不倫小説よりもこの短編集には、不倫の毒がつまっている。背筋がぞっとする、ひそやかで華やかな、毒々しい空洞が。
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