話は素晴らしいです。
ですが、世界名作劇場が再開し「レ・ミゼラブル 少女コゼット」が1年間も放送されましたので、当然アニメ版の方が内容が濃いです。
こちらは少年少女訳で、かなり内容を端折ってありますので、時間があればアニメ版の方をお勧めします。
観た上で読みたいのであれば、根気がいりますが、全訳版を。
この巻では後半部分でアラジンの魔法のランプのお話しが出てきます。 アラビアンナイトの中でも一番有名なんじゃないかな。 しかしランプをこすると魔神が出てきて望みを何でもかなえてくれるっていうイメージしかなかったので、なかなか楽しく読めました。 悪い魔法使いから奪った魔法のランプで富を手に入れ、一目惚れした王女に求婚して大臣や魔法使いの妨害にも負けずに結婚して幸せになるっていう話です。 アラジンは放蕩息子だったけれど、富を手に入れて品行までよくなっていくという不思議な人物だった。
この巻で思ったのは、物語のつなぎ方もまた千一夜物語の作者もといシェエラザードの腕の見せ所だったんだなってことですね。 ヌールとマリアム姫の激しい恋を語ったかと思えば賢者の理性がすべてに勝る様を語り、さらに恋のために死んだ悲恋の男女の話の後で魔法の鏡で完全なる処女を探す男の話を描いてみせる。 そしてシャハリヤール王が悩みこんだところで魔法つながりでアラジンの魔法のランプという不思議な物語を持ってきてってね。 そしてようやく、シェエラザードが千一夜ぶっ通しで王の夜伽をしたのではないということに気づいてしまった。 まあ当然だね
これだけ長大な作品は、短いコメントを付すのに全く適さないと思います。 それでも気に入ったので、無理を承知でこの作品をどのようにとらえたか、記してみましょう。 これはジャン・クリストフという音楽家の一生を描いた作品ですが、意志を持って強く生きるとは、どういうことなのか見事に表現されています。 不屈の精神という決まり文句が、全然空虚でなく、内実を持って心に響いてきます。 そして、我々が生きていくために芸術がどれほどの助け、あるいは励ましになるか知ることもできます。 もしクリストフに音楽がなかったならば、あのように強く生き抜くことは到底不可能であったでしょう。 同じく芸術たる文学を一生懸命読むことによって、これからまだ長く残されている人生を、クリストフのように強く、また、美しく生きうるのではないか、と希望が湧き起こってきます。 こういう本に出会えたのは、幸せでした。
西洋民話と日本民話の融合と再生――豊島与志雄の童話を読み解く。「レ・ミゼラブル」などフランス文学の翻訳者であり、「赤い鳥」の童話作家だった豊島与志雄。戦前、戦後にかけ100編以上の童話を残し、自由と自然への讃歌に満ちた豊島与志雄の童話とは。
今からちょうど百年ほど前の時代を生きた音楽家の一生の物語です。悪戦苦闘の少年・青年時代、苦悩と精神的錬磨を積み重ねる壮年時代、スイス山地の春の嵐の中に訪れた啓示を契機に幾多の精神的熟成プロセスを経て、芸術にいっそうの飛躍をみ、新たな世代の育つ姿を見て芸術の継承と発展を確信するに至る豊饒な物語です。
さらに百年ほどをさかのぼるゲーテの生き方は、その多くの作品に見られるように、いかにして己、個を十全に展開させるか、を問うものでした。ジャン・クリストフの物語が展開する19世紀の末から20世紀の初頭、それは、産業革命やフランス革命などの経験を踏まえ封建社会から個人が尊重される社会に移り、この時代に至って特にヨーロッパでは個が花開いた、そういう時期でした。花開くためには、個の開花へ向けて全力の闘いが数多く展開されました。
ジャン・クリストフの時代、近代西欧が第一次世界大戦やロシア革命を前にして大きな曲がり角に立たされていた時代において、民衆、特に知識人・文化人はこの閉塞感の中でどう生きるかを問われていました。そこに、クリストフの人生を通じてロマン・ロランが呈示したものは、苦闘のかなたに、意見・立場・民族などの違う人々をも受け入れ得るほどに広く気高い心が獲得され、そこに高度な芸術が生まれるということでした。ロマン・ロランの英雄主義の具体的な展開でした。
本文開巻1頁には「いずれの国の人たるを問わず、/苦しみ、闘い、ついには勝つべき、/あらゆる自由なる魂に、捧ぐ」と記されています。読み終わって改めてこれを読み返すと、ジャン・クリストフがまさにこのような「自由なる魂」であったことに気づきます。
大きな力で動いてゆく社会、とりわけ閉塞感に覆われた時代に、その流れから人間性を高めるような方向を人びとに指し示すような英雄、また、なかなか見え難いであろうけれど必ずや移ってゆくはずの社会の流れを読み取ってその方向に人びとを導いてゆくような英雄、それを、偉大な心を獲得する闘いの中に描いて読者に示すこと、それをロランは成し遂げたと思うのです。それを現代につなぐことは私たちの仕事です。
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