馬引き沢忠助を土方の間者忠助としてストーリーティラーに置く、他者の作品とは一風変った筋運びを持つ。 土方と女盗賊,山崎,忠助,桂の巡りあわせにドキドキしながら、しっかりと史実の時間軸を追っていく上手さに加え、立場ごとの心情を丁寧に扱った、誰も悪人の居ない公平さも非常に好感である。 こと、土方に関しては、彼の多摩言葉と気風の良さ、それを根底にした心のあり方などが魅力的で、多々在る物語の中でこれ以上の男っぷりは無い。 土方を魅力的に書いた物語で在る為、必然的にいい男を物語るに必要なフィクションが多分に描かれているが、作者の嫌味の無い作風がくどく感じさせずにとても気持ちよく受け止める事が出来る。 近藤・沖田は勿論、助勤以下の隊士も丁寧に書かれており、特に土方が戦地で唐突に聞かされる原田の最後のエピソードは見事の一言。
このところ、立て続けに土方さんに関する小説・書物を読んでいます。 中でも、この小説の土方さんほど悲哀が感じられる人物はありません。 近藤勇という将器を持つ男を立てるために、自分はひたすら汚れ役に徹し、 周りから恐れられ、嫌われても自分の信じた・ホレた男のために尽くし続ける姿は胸を締め付けられます。 この本の土方さん本人も、苦笑しつつも「それが自分の役割だ」と割り切って、 近藤勇・新選組のために尽くします。 読みながら、「あぁ、どうして回りに彼の気持ちをわかってあげられる人がこんなにも少ないんだ...」と歯軋りしたくなるほどです。 優男だった歳さんが、”鬼”にならざるを得なかった状況が、 よくわかる1冊です。
6つの短編からなる作品です。
新選組が関わるイベントを大局的に説明するため、時として沖田は脇に置かれ、近藤や土方、そして監察方の山崎などが中心を占める章もあり、沖田総司が主役じゃないの?と思いましたが、後半に行くにしたがって沖田に中心が移ります。
最終章では別れが語られますが、近藤や土方、沖田の最後は分かっているとは言え作者の筆力により余韻のある仕上がりとなっています。
歴史家や研究者からは一介の浪士が持つには金額的には不釣合いと言われる沖田の差料についての説明も流れ良くまとめられています。
全体的に題名からイメージしていた内容とは違っていました、良い方にです・・。
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