若いのにえらい才能だね。唄もウマイし、曲作りウマイし、この若さで何気にやってしまうあたりは感心します。このアルバムはソツがない。曲順もバリエーションも、所謂「捨て曲」もない(これが一番すごい)。捨て曲がないアーティストなんてそう滅多にあるもんじゃない。大したアーティストですよ、ウタダは。
文庫版が出たので、映画の予備知識として読もうと思い購入したのだが、ストーリー自体は一気に読み通せるほどの面白さはあるのだが新書版のレビューでも言われている通り、良くあるミステリ。多少本を読んでいる人ならどこかで1回は見た展開だと思う。だが、謎解きに使われるキリスト教などの宗教史、美術史についての知識は予備知識なしでも理解できるほど分かりやすく解説されている。ヒットの理由はそこにあると思う。ただ、此処で提唱されている説は、作中では断定的に書かれているが、憶測の域を出ていないというのが実情のようだ。
文学的な面白さを期待しているのならやめた方がいいと思う。個人的には上中下で1700円の価値はある。
上下巻に分けてしまうと、どうしても上巻は登山・下巻は下山という印象が漂ってしまいがちです。上巻で構築した仕掛けを下巻でどう解きほぐしていくのか、というやや意地の悪いスタンスで読み始めました。この類の小説では着地地点の大前提はある程度みえているので、前半以上の筆力が要求されるわけですが、登場人物それぞれのドラマが緊迫しているので、その点期待は裏切られませんでした。(物語の性格上具体的に書けないのでもどかしいですが)スト-リ-展開としては、やや力の抜けるような筋立てもありますが、それぞれの人物のドラマにきっちり落とし前を着けてあり、納得の幕切れでした。ラストシーンについても、あまりに映像的な終り方で、別なやり方もあるのでは…という気もしますが、これはこれで圧倒的に美しい。爽快な読後感を狙えばこれが最高でしょう。読破したくなる若手の作家に、久々に巡り会いました。…願わくば、映画化でイメージがぶちこわしにされないことを。
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