88年当時まだ学生だった私は、ふとレンタルCD店で借りて聞いたのがはじまりだったが、その後ラジオで山下、大瀧、萩原さんがこのアルバムの評価をされており、当時はブライアンが廃人同然のところまでいっておりながらアルバム1枚作ったことはすごいことだと言っておられたのがすごく印象に残っております。実際セールス的にはココモとは対極にあったわけだが、特に今回のリマスター版にはLET'S GO HEAVEN ~やアルバム未収録が入っているのがありがたい。今改めて聞きなおしてみてもこのアルバムはすばらしい。余談だが私個人、最近毎朝MDウォークマンでこのアルバムを聞きながら通勤しています。
『ラッキー・オールド・サン』CDの特典DVDに、恐らく本DVDのダイジェストと思われる2曲(「Good Kind of Love」「Forever My Surfer Girl」)の演奏場面とドキュメンタリー(約25分)が収められていたが、それがCD全編分の演奏、そしてさらにたくさんの関連映像を特典に収めた決定版DVDとして発売されるわけだ。
既に輸入盤は入手可能だが、ドキュメンタリー等の鑑賞には日本語字幕はどうしても欲しいので、私は国内盤を購入。
バックバンド+ストリングスの豪華で豊潤な演奏は申し分なし。恐らくブライアンのリードボーカルは一部手直しされているだろうが、そんなことは些細な問題だ。ファンとすれば、還暦をとうに超え、そして幾多の苦難を乗り越えて、こうしてブライアンが楽しげに演奏し歌う場面を見るだけで感涙するはず。
特典も充実。ドキュメンタリーは70分もの拡大版で、モンキーズのミッキー・ドレンツなど著名人も多く出演、バンドメンバーやブライアン自身のコメントも丹念に拾い上げ、良質だ。 個人的には日産の提供でWEB放送された最新ライブで、観客との一問一答にブライアンが応えるところ(「自分が作者になりたかったと思うほどの大好きな曲は?」との質問になんとドゥービーのwhat a fool believesをあげたのにはビックリ)や、「ラッキー・オールド・サン」各曲へのブライアンとスコット・ベネットのコメントなどを非常に興味深く視聴した。盛りだくさんで、充実の1枚だ。
ブライアン・ウィルソンのジャズアルバムってことでどんな音なのかわくわくしながら聴いたのですが。いやーこうきましたか。ガーシュインの名曲が見事にアメリカンポップス生まれ変わっています。 これは正に新解釈、ビーチボーイズファンはもちろん、全てのポップミュージックファンに聴いていただきたい。いや聴かないと後悔しますよ、と伝えたい逸品です。 もちろんブライアン・ウィルソンのボーカルは昔とは違いますが、年齢を重ね、更に円熟味、説得力を増しています。こんなに素晴らしい作品なのに、日本仕様盤が発売されないのは何故なのでしょうか?
「ペット・サウンズ」と村上春樹の邂逅に、素直に感動できるか、うがった見方をするか、それは人それぞれだ。おそらく、その人が「ペット・サウンズ」から本書を見出すか、村上氏の側から見出すか、あるいはそもそも、この2者の組み合わせに打算や話題つくりといった胡散臭さを感じるか、で評価が変わってくるのだろう。
まず私のスタンスを明確にしておくと、ブライアン・ウィルソンの大ファンで、村上氏の作品はほとんど未読。
そのスタンスで本書を評価すると、内容自体、特に「ペット・サウンズ」に対する音楽的考察は新しくもない。読みどころは、それが筆者の多感な半生とともにビビッドに記されている点につきる。なぜなら「ペット・サウンズ」が多感で無垢な精神性に呼応する作品であり、多感で無垢な精神性とは、誰にでも内在しているからだ。それが表出するか否か、自覚できるか否かの違いだけだ。
さらに言うと、最も嬉しかったは村上氏の訳者あとがきだ。村上氏は「ペット・サウンズ」が心底好きであり、一人でも多くの人にこのアルバムを聴いて欲しくて本書の翻訳を引き受けたのだそうだ。これを「無垢」とは言うまい。それほど私もお子様ではない。しかし、その村上氏の思いがあるからこそ、の分かりやすく言葉選びのセンス抜群(と感じられる)訳文の魅力が十分感じられた。
悪いわけがない。とはいうもののどうしても『たら』『れば』という言葉がついてまわる作品だ。しかしこれは67年にビーチ・ボーイズが発表しようとした『SMiLE』ではなく、2004年にブライアン・ウィルソンが発表した『SMiLE』なのだ。もちろん、コンセプトなどは66年、67年ごろにブライアンが考えていたものに忠実なのだろうが、忠実だからこそ5つ星を付けられない。ビーチ・ボーイズの名作『ペット・サウンズ』は、ブライアンのコンセプトを理解できない他のビーチ・ボーイズをなだめすかして作ったという点が鬼気迫る緊張感をリスナーに与えてくれるのだ(ほぼブライアン独りで制作されたようなものだが)。つまりブライアンを理解できないヌケ作どもを使って『ペット・サウンズ』を作ったのだが、本作はブライアン以上にブライアンのことを理解しているメンバーが揃って作ったわけである。したがってブライアンの望みを形にできただろうが、軋轢と緊張の中で名作は生まれるのではないだろうか? つまり本作にはそんな軋轢と緊張があまりない。むしろブライアンのトラウマみたいな精神的な極個な緊張はあるが、それはそれほどブライアンに思い入れのないリスナーには隣の夜ご飯の献立レベルの問題で別にどうでもいいことのように感じてしまうのではないだろうか。とはいうもののブライアンファンとしてはブライアン自身がこれを完成させたことによって長年の苦痛から6割は解放されたんじゃないかと思うと、「良かったね」という御祝儀代わりに4つ星なんぞつけちゃうわけだ。
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