小難しいことは書いてなく読みやすい本である。精神のバランスを崩して突飛な行動に走る人を冷徹な目で観察しているのが面白い。ただ精神のバランスを崩すのは他人事ではなくて、自分自身もちょっとしたトラブルやパニックで冷静さを失い、おかしな行動を執ってしまいそうな気がする。人間とはやけに感情的で弱いものである。この本が教えてくれるのは極端な潔癖さやこだわり、または過剰な気遣いも精神のバランスを崩すようで、ある程度のいい加減さや無責任さ、過剰な自己嫌悪に陥らないだけの図々しさが必要であると感じたことだ。
著者は図々しい奴は大嫌いのようだが。
本の中でも触れられているが、「マンガ地獄変」というサブカル的な名著以降、似た文脈で語られる本は少ない。
「と学会」のとんでもマンガ紹介本が近いところか。
本書は著者自身が古本マンガの世界に入り込み、ついにはその世界で働き始めた人物であるだけに、「上から目線で笑う」というよりも、作品への愛情がどことなく感じられる点で好感が持てる。
「マンガ地獄変」のような、執筆陣の強烈な個性は感じないので、そこら辺に物足りなさを感じなくもないが、一般向け週刊誌の連載ということでそこに配慮した塩梅なのかもしれない。また、そのへんの「緩さ」が功を奏して、むしろ逆にライトな読み口で読める。
内容的には、数号で休刊した漫画誌の掲載作品などのレア物があったり、あまりこうしたジャンルで取り上げられない「児童書」も数冊取り上げられており、それが非常に興味深かった。
Coccoの詩はいつも独特の雰囲気を放ち、さらにはげしいリズムと、凄い歌唱力で聴く人の心にずかずかとはいりこんでいく・・・。このようなアーティストはおそらく彼女にしかできない・・・。
そうですか、武満さん逝去から10年ですか。早いもんですね。それを機にして、しばらく入手困難だった映画音楽選集がBOX化。ボーナスCD(貴重なインタビューCD)もついてこの価格です。まず感涙しましょう。毎年、春になると何気に武満が聴きたくなるのは、彼の命日に感傷的になっているわけではなく、芽吹き、花咲く植物たちのような静謐なれど怪しいほどに力強い生命を感じたいからでしょう。彼の映画音楽はもちろん映画ありき、の作品群ではありますが、有体に言えば映画を知らずとも陽気の中で聴く者が思い思いに想いを馳せる楽しみを与えてくれるものです。あなたがもしジョン・ウィリアムズを10回聴くのだとしたら、その1回分の時間を、ぜひこの日本の産み出した典雅なる才能との出会いにしてほしいのです。春、武満。今も耳をそばだてたくなる美しい響きが陽気と妖気をかもしだします。そうですか、もう10年ですか。。。
絶望の詩を書ける人は、それに比例するように希望を知っている。愛情と憎しみ、生と死など、互いに矛盾し合った命題を背負いながら痛々しい歌を残していったCoccoは、本当の意味での「救いの手」をリスナーに、そして自分自身に差し伸べていたのだと思う。
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