【ズバリ!文化批評】島尾敏雄の戦争体験[桜H22/9/10]
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桐野 夏生作品は、ほぼ読んでいてOUTもかなり面白かったので期待していました。

OUTに関連づいた作品でもなく、あまりにも期待しすぎたせいか正直面白くなかったです。

上手いと言えば上手い作品なのでしょうが、面白かったか?と問われると・・・
次回の作品に期待します



沖縄の戦後思想を考える

本書冒頭、1945年〈昭和20年〉8月の人口ピラミッドの図表に釘付けとなって動けなくなる。
男も女も15歳から、40代までの人口がほとんどゼロに近いのである。

救いは〈と言っていいのだろうか)15歳未満の人口がかろうじて残っていることである。
それはつまり「カンプー」の「クェヌクサー」
そこから、沖縄の戦後思想は始まるのである。

「カンプー」の「クェヌクサー」とは、
「カンプー(艦砲射撃)」の「クェヌクサー(食い残し)」
という意味である。

食い残しとは凄まじい言語感覚である。

著者は沖縄学の開祖、つまり戦前の沖縄の思想の源である、伊波普猷の研究家。



死の棘 (新潮文庫)

 夜間高校講師で糊口をしのぐ売文業の夫トシオによる放縦な生活の果て、篤実な妻ミホが
発狂した。
 種々の意味において、狂気というのはしばしばあまりに鋭いもの。一度、妻の発作に火が
つけば、夫の後ろ暗い過去の急所が、執拗にそして的確に抉り出されてしまう。
 そんな狂気に晒される夫もまた、病みへと引きずり込まれずにはいられない。
 塗り替えることのできぬ過去をめぐる責め苛み、夫はひたすらその過ちへの赦しを請い、
妻も一時赦しを与えたかに見せるも、発作の度にそれらはすべて洗い流され、果てなき狂気の
攻防が繰り広げられる。そこにちらつくかつての愛人の影、妻はさらなる闇へと向かう。
「カテイノジジョウ」、不和と呼ぶにはあまりに苛烈な夫婦間のせめぎ合いは、当然に幼い
子供たちを蝕まずにはいない。
 過去の影に支配された一家の壮絶な修羅場は収まることを知らず、それでもなお、夫と妻は
互いにすがらずにはいられない。「私からもぎ取られてしまえば、彼女は生きて行くことが
できないことに気がついた私は、彼女を手放すことはできない」。

 異常といえば、それはあまりに異常な共依存関係。
 しかし、島尾の描き出す狂気の軌跡はすべての人格に象徴的な寓話となる。
「耐えがたい妻の発作も、あわれが先に立ち、ひたすら眠りこむそのすがたに、愛着の湧き
あがるのがおさえられない」。
 誰のことばだったか、愛の対義語は憎悪ではなく無関心、とはまことに至言。
 もしこの世界に愛なるものが見出されうるとするならば、それはすべて互いを傷つけ合う
代償として横たわることとなる。
 島尾の文体は時に読む側の胃壁をもただれさせんばかりに真に迫ったもの。
 他者を傷つけずには存在しえぬ、この世に生み落とされた人間の不条理をこれでもか、と
生々しく綴ってみせた、問答無用の名作。



ガールフレンド (P‐Vine BOOKs)

 子ども時代から30歳を過ぎた現在までの、同級生から年上の女友達、おばあちゃん、そして場合によっては男友達やも含めた「ガールフレンド」たちとのかけがえのない瞬間、さりげない出会いと別れとが、抑えた口調で描かれた久々のエッセイ集。

 居場所もつるむ相手もいなくて、意外にも疎外感に悩んでいたらしいオリーブ少女時代、ポスターの宇多田ヒカルと「妙齢感」を競ってしまう最近……。これは知っているあの娘だ、学生時代のあの子とおんなじ、もしくは自分に似ているかもとクスリと笑わされるかと思えば、なにげなく島尾敏雄・ミホ氏の名が出てきて、思いは一挙に彼女が受け継ぐDNAに飛んでいく。

 奄美の自宅で一人亡くなったミホ氏の愛を探しあぐね、「ため息が腕にかかって、汗の跡がひんやりした」と表現する感性。自分の部屋をかたづけていて、「いつかわたしがいなくなった時、わたしを囲むこのガラクタが代わりに息をしてくれるかもしれない」と夢想する思い。彼女のブンガク的未来には、ますます期待を持ってしまう。 

 心地よい流れに身を任せているうちに、彼女の思い出、生活風景がこちらの頭に鮮やかに映し出されてくる。でも、巻末にあるように作品の一部はフィクションらしいから、そこにはキッチリ作家的な意図も入っているのだろう。特別にドラマティックなエピソードはないのに、読み終えたという満足感に気持ちよく浸らせてくれる不思議な作品集。



まほちゃんの家

おじいさん(故・島尾敏雄氏)のこと、おばあさん(島尾ミホ氏)のこと、お父さん(島尾伸三氏)のこと、お母さん(潮田登久子氏)のこと。アノ島尾家の話題が書いてあるのだな、と興味本意で読み進めると、いつの間にか「何があったか」よりもしまおさんの文章の繊細さに、涙。唯一の恋の話が失恋話なのがまたよかった。失恋したての女の人なら、ザワザワする胸にソっと手を当ててくれるような、そんな素敵にリリカルな物語でした。フツーじゃないことをフツーに書けて、フツーなことをフツーじゃなく書けるのは、しまおさんの視線のブレなさのせい? あの大きな目で、ちょっと引いて、そして、じっと、じっと、いろんなことを見てるのかなと思うと、見られている方はちょっとコワイカモ。 それだけ手強い観察者です。しまおさんはこれまでの軽いタッチとは一変、はじめての本格エッセイとのことですが、今後もこういう文章を読みたいです。小説も...!?



【ズバリ!文化批評】島尾敏雄の戦争体験[桜H22/9/10]


大東亜戦争中、特攻隊に配属された経験を持つ島尾敏雄。戦後作家としての、彼の思想の根底にある「戦争体験」についてお話ししたいと思います。 ◆チャンネル桜公式HP www.ch-sakura.jp
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