まだ発売されていませんが、収録されている公演はただのダンスの発表会ではなく、ダンスによって表現されている「お芝居」のようなものでした。
(バレエは普通ですが)1つのストーリーを様々なジャンルのダンスや表情で、上手に表現されていました。
主演の森山未來はドラマや映画の雰囲気とはだいぶ違い、「綺麗」という印象です。(個人的には中性的なダンサーという印象を受けるシーンもいくつかあり、ウォーターボーイズ、世界の・・・、などでは観ることの無かった雰囲気だと思います)
主演の森山未來をフィーチャーした編集なのか、作品を観せる編集なのか、でだいぶ変わってくると思いますが、後者であれば森山未來ファン以外でもそれなりに楽しめる作品なのではないかと思います。
ただ、森山未來が「主演」だけではなく、初めて演出を手がけた作品でもあるようで、前者の可能性が高いと思われます。
まず良い点について、苦役列車は観客に対する表面的な媚をいっさい排除したシニカル(冷笑的、皮肉たっぷり)な映画です。一般的に商業用の映画は、観客に変わって主人公が活躍するものが多く、観客がヒーローやヒロインになってスカッと敵を倒したり、ドラマチックな恋の展開を楽しんだりするもので、観客の共感を得る事が映画の人気に繋がります。しかし苦役列車は主人公に共感は持てず、スカッとする内容でもドラマチックな恋の展開もありません。それは特典映像の森山未來のインタビューでも述べられています「この映画は花粉症対策のような映画です」と。つまりこの映画は一般的な商業用映画とは異なり、観客の共感を得ることよりも、汚い事をありのままに汚く表現しているシニカルな映画と言えます。
また、この映画のもうひとつの観方として森山未來の演技力と、それを取り巻く高良健吾、前田敦子、マキタスポーツなど脇役の演技力があります。特に主演の森山未来は貫太を演じるのではなく、内面から貫太の人格が滲み出すなり切り度です。彼の役作りに対する姿勢はコメンタリーやインタビューでも確認できるので、一度特典映像をご覧になってください。キネマ旬報の主演男優賞、ブルーリボン賞の助演男優賞ノミネートが伊達ではない事が分かると思います。
そして脇を支える高良健吾、前田敦子、マキタスポーツも個性的な俳優ですが、単に貫太と競合するのではなく貫太と向かい合い別の道を示すことで、貫太が今どこに位置しているのかを鮮明に浮き出させています。映画では貫太が文学界にデビューする前の人間模様を中心に展開し、どうして文学界をめざす気になったのか暗示させて終わりますが、そこに至るまでの主演・助演俳優の演技力と山下敦弘監督の演出を楽しんでください。各俳優陣と主演俳優のコントラストが巧みに表現されています。また蛇足ながら少しマニアックな話を追記すると、フイルム撮影によるザラついた質感が1980年代が舞台のこの映画に似合っていました。フイルム撮影はデジタル撮影で表現できない味があり、これも苦役列車の魅力のひとつだと思います。
続いてこの映画のダメな点については、原作者が言及している「私小説の背負う制約の改変」があります。特に私小説の制約改変が顕著に表れているのはラストシーンで、特典映像のコメンタリーではファンタジーとも表現されています。しかしながら映画版の苦役列車もラスト以外は概ねリアルで現実に近い世界観で描かれていました。ラストのファンタジーっぽさは、そこに至るまでの苦役列車の世界観と異なる制約であり、2つの異なる世界観や制約が混在する点については賛否両論でもしょうがないと思います。原作者がナシとするのはもっともな話で、私はこの点については「★」ひとつ分の減点材料だと考えています。その理由については長くなるので本レビューでは割愛しますが、簡単に説明すると映画なのだから小説と異なる制約はアリだが、最初に設定した制約をラストで改変するのはナシだと考えているからです。そしてもしもラストが夢オチだとしたら「★」2つ分の減点に値します。
これがDVDになるとは。しかもアマゾンで買えるようになるとは思いませんでした。
元ネタが「女殺油地獄」なので結末が暗くなることは織り込み済み。 そこに至るまでの「過程」が見どころです。 良い悪いでは割り切れない人々のそれぞれの心情が描かれます。 今回、特にすごいと思ったのが、ともさか演じる妻と夫の会話です。 気を遣いすぎたりする夫婦間の気持ちと、言葉のすれ違いがリアルでドキッとしました。 どちらが悪くもなく、むしろ気にかけているのにすれ違ってしまう…非常に哀しい。 最も注目の出演者は、実は、江口のりこさんです。 今回は、ちょっと外した?キャバ嬢役。外した感じと、すれた感じが良かったです。 もっと長い出番でじっくり見たい面白い役者さんです。 意外やストレートプレイ初出演・森山未來さんのダメ男ぶりが哀しい。 ともさかりえさんは幼馴染みとの距離感や、家庭内で気を遣う主婦の微妙な心の変化を演じる難しい役に挑戦。 田口浩正さんはシリアスな演技が絶対光ってる! それも日常の場面でのコミカルで弱気なキャラクターづくりがあってこそ、怒りの部分が強調されるよう。 満島ひかりさんは、私にとっては今でもウルトラマンマックスのエリーですが、 主人公に通じる暗く重い部分を抱えてました。 根岸季衣さんの安定した演技はさすがの貫録です。
どうしてもCDで聴きたかった「その街のこども」の主題歌・挿入曲を含むミニアルバム。 どの曲もスローで味わい深く、スッと耳に入ってくるのですが、 決して軽く聞き流せない強烈な主張を感じます。 音と音の間の空気感が本当に素晴らしく、密閉式のヘッドフォンで1日中聴き続けたくなります。 私のベストトラックは(2)。「その街のこども」のクライマックス、 震災の記憶を抱える若者二人が深夜の神戸をひたすら歩く場面で使われた曲で、 トロンボーンが高らかと響く後半の盛り上がりに胸が熱くなります。 日本のギターインストにこれほどシビレたのは初めてかもしれない。
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