これは、恐らく知る人ぞ知る音楽家でしかも映像作家でもある(本人は映像を作っている人間だと言っている。映像に足りない要素を音で足すらしい。)高木正勝によるLIVEの模様を、本人のインタビューやリハーサル風景などを織り込んで製作された映画「或る音楽」の収録されたDVDである。まあ映画とは言うものの、内容としては先に述べたようにLIVEのドキュメンタリー映像。
以前までの高木さんの作品と比べるとだいぶテイストの違う、神話という世界を表現した今回の作品全体に沸き立つどこか物寂しいけれど懐かしいとも感じるこの雰囲気。彼も「そろそろ日本の音楽を作ってみたかった」とどこかで発言していたような覚えがあるが、わたしは彼のこちらのタイプの音楽の方に惹かれた。惹かれるものがあった。わたしはラジオから『Tai Rei Tei Rio(曲名)』が流れて来た時に自然とそちらに耳を奪われたのを覚えている(ただ、この曲を聴いた時にまず頭に浮かんだのはヨーロッパの情景と民謡なのだが(笑))。直ぐさま曲名を検索し、この人物の存在に辿り着いた。いや本当に出会えてよかったとつくづく思う。 CDを聴いてこの人の音楽はよいと感じた、感じている人ならば、この作品を見ることによってその音楽に映像を足してみるのはいかがだろうか。
より具体的な感想としては、今回のコンセプトに基づいて作られた訳ではないが高木さんがライヴの際などには必ず演奏する代表曲『Girls』のピアノソロパフォーマンスを映像で見られたのがよかった(本編の編集されたバージョンとスペシャルコンテンツのフルバージョン)。美しい小川の水の流れや森の木漏れ日を連想させる、「音」だけでも非常に心地よい曲だが、やはりこれにもPVではないが演奏シーンという形の「映像」を足して聴きたい。特にピアノ曲は演奏シーンと合わせてこそ感動が大きくなるような気がするからだ。 ちなみに私は「Private/Public」というアルバムに付いている楽譜を参照しながら趣味でこの曲を練習中なのだが、これを見た後は以前にも増して練習する意欲が湧いた。早くあの演奏を自ら体現したいものである。 ちなみに聞いたところによると、この曲にはよくアドリブが入るらしく、弾く時々によって弱冠違って聞こえるそうなのだが、たしかにアルバム「Private/Public」の時とこの作品のバージョンとは少し違うようであった。これらや他のLIVEの音源とを比べてみるのもおもしろいかもしれない。
他、このアルバム独自の曲に関して言うなら「Homicevalo」と「Tidal」が特に良いと感じた。前者は静かで悲しい、人の嘆きと表現したらよいのだろうか。鬱気味の人は聴かない方がよいかもしれない曲。しかし浸りたいと思える世界感がある。後者はただただ美しい。この「或る音楽」の中では一部しか見られないが、潮の満ち干きのごとく行ったり来たりする女の子の顔で表現されたPVもなかなか見応えのある作品である。ライヴなどに行けば全編が見られるが、これを見て中には「怖い」と感じる人もいると思う。何せ眼前に揺らめく女の子の顔には明らかな生気が漂っていないからだ。この映像はミレーの絵画「オフィーリア」の続きをやっているつもりで作ったというが、まさにあの絵のごとく、人の生きた状態から死へと変化するその刹那の情景の美しさがこの映像にも見事に描かれていると思う(素人ながら)。一見生きてはいるのに同時に死を連想する。怖いとも思える。しかし見入ってしまう不思議な魅力的な作品。(DVDとして一般発売されていないのは実に残念。そしてこれからもこの作品は一般向けに大量生産されることはないらしい。よって、このPVの全編を高画質で視聴するためには、どうやらライヴに行くしかないらしい。購入することも出来なくもないが非常に高価だという。しかしライヴの方が間違いなく感動が大きいということは想像に難くない)。
最後に、音楽や映像作品とはあまり関係のないことだが、映画の中で正勝氏が露店のような場所でサザエを食べているシーンがあるのだが、それがなんともほのぼのしく感じられて、意外に好きなシーンである。
仁の歌声は時に力強く、時にガラスの様に繊細で好きだ。その歌声の中に溢れてる物は聴く人の心を切なくも優しくさせる。「冷たいままで」における歌声はピカイチ!潮の様な強弱の満ち引きがいい。彼女とかと聴くよりも、これは一人で聴いてみて、自分の心と静かに向き合ってみましょう。
もう微積なんて忘れてしまったが…という方が居られたとする。さらにその方がひょんなことからもう一度微積をやってみようかな、という気になったとしよう。本書はそのような方に是非お勧めしたい一冊なのである。
実数論から始まるガッチリとした微積分をやるというのも一つの道であるが、むしろその使われ方を通じて微積分を理解したいと思っている方もいらっしゃるだろう。本書はそのような要望に応える。特に経済学部での講義が元になっているだけに、多くの例や演習問題が経済学等で扱われる社会現象から題材を採られている。だがそのような例を用いているとは言え、本書は現象のモデルを立て、それを微積分を用いて解析し、将来の予言を行うという近代科学の精神を同時に説いている書物なのだ。
例えば本書の第5章の冒頭、微分方程式の初期値問題を解く3つのステップが次の簡潔な言葉で表現されている。(i)始めはこうだった、(ii)今はこうである、(iii)将来はこうなるだろう。この言葉は微分方程式の考え方を表現する言葉として実に警抜なものだと思う。
一変数関数に題材は限られているとはいえ微積分の基本事項の解説は詳しい。特に解析学で重要となる近似の考え方は様々な例を用い計算まで含めて述べられている。また差分法を述べた第2章の中に補間法の説明が詳しくなされているのも嬉しい。微分・積分法と差分・和分法を同じウエイトで述べているのも他書に無い本書の特徴であろう。さらに、第3章の初等関数を述べた章では、1/xの不定積分で対数関数を定義しその逆関数として指数関数を定義する方法が丁寧に述べられている。お話だけでは無く計算まできっちり書かれた、3名の数学者の手による大変な労作であると思う。森毅「現代の古典解析」及び山口昌哉「数学がわかるということ」と併読されるならば微積分学に対して理論・応用の両面からより深い理解が得られるだろう。多くの方にお勧めできる、とても読み応えのある書物である。
萩本欽一が率いる「誰に見せても安心お笑い番組」の、
中から生まれた、わらべのベストアルバムである・・・が、
実情は、すべてのシングルと、当時発売された唯一のアルバムに、
シングルのカラオケを載せただけの、
いわゆる「寄せ集めアルバム」の形態である。
内容はというと、結構これが凝ったつくりといえば、
確かにアルバム的には、結構凝ったつくりなのである。
「わらべ」というアーチスト名と、番組から出てきた、
企画歌手という側面を取り除いても、それは間違いなく、
意外性をちょっと含んでいると思う。
たとえば「めだかの兄弟」は、3拍子の曲に乗せて、
のどかに「すずめ・こねこ・めだか」の兄弟が、
大きくなったらどうなるかという曲の、
音のつくりの下地は実はテクノだったり、
「時計をとめて」の、フレーズやメロディーを含めて、
ピアノで旋律をアシスタンスをかけるような感じで、
歌は、つつがなく進んでいくが、実は音的には、
教会音楽との併合で、時計を止めることと、教会が持つ、
過去への照らし合わせということをかけて、
最後は、教会の鐘の音とシンセのタイムクロックで、
過去と新しい今後との時間の流れをかけているし、
「もしも明日が」は、弦の音とシンセで、
ほんわか音を作っているように見えるが、
実は、結構ドラスティックな感じの音をたくさん使っている。
番組の企画モノといってしまえば、確かにそれまでの話で、
アルバムも、結構企画モノくさいのだが、
1曲ずつの中は、当時の流行や音を、割と取り入れている、
今、聴くと、萩本欽一の当時の勢いも、音の時代背景も、
どっちも楽しめる、ある意味「2度おいしい」アルバムである。
決して、悪い意味で言っているわけではない。
むしろ、こういう好例はないと思う。
ヒット曲が大変多い島倉さんですが、ただヒット曲のみを収録するだけでなく、珍しい音源を多く収録してある点や曲順がよく練られてある点など、ファンのことをよく考えたCDであると思います。
ただ、昭和30年代の曲が少なめかな…
昭和30年代は、ヒット曲が本当に多くて、どうしても漏れてしまう歌が出てくるのは仕方がありません。もちろん主なヒット曲はきちんと収録されてあります。ですが、できれば「牧場の花嫁」「東山心中」「月子の唄」「乙女流しは寂しいネ」なども収録してほしかったです。中ヒットでしたが、これらの曲はお千代さんの個性が特に生きていると思われるし、今テレビで歌ったりすることはまずないので、これを機会に収録して欲しかったです。
なお、もう十年くらい前になるでしょうか、40周年記念が出たときには、収録されてありました。
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