厳しいご時世の昨今、いかにも身近にありそうな話だったので、一気に読んでしまいました! 人生の転落によって色々なことが見えてくる、というのは良くある話だけれど、淡々と、ここまで自分の内部をさらけ出して書くことができたマイケルという人もすごいなぁ、と思いました。映画も楽しみ!
これまでの人生を振り返っても感じることなのですが、 何かスキルを身につけたいという時、関連本を何冊も読んでも効果が薄いと思います。 むしろ思考の基点となる一冊を極めてから、色々な本に手を出した方が良いことが多い。
例えば受験勉強に明け暮れていた高校時代、 私は苦手の数学を克服するため、まずこれにしようと決めた一冊の問題集を何度か頭に刷り込むほどやりました。 その後で、初めて別の問題集に手を出して、練習を重ねるようにしました。
はじめから何冊かの問題集を買っていたら、数学が人並みにできるようにはなっていなかったと思います。
大学に入ってから生物を学びはじめた時もそうでした。 一番最初に時間をかけて1000ページ近くあるMolecular Cellを英語で読みました。 そこで読んだ知識は後々にわたって生物学の色々な分野を理解するときに自分の助けになりました。
色々な捕らえ方があるかと思いますが、 この「ストーリーとしての競争戦略」は、教科書的にまず頭に叩き込んでおく一冊として非常に良いと思います。
この手の本を“読み流している”ビジネスマンの中に、「戦略とは何ですか?」と問われて端的に回答できる方はどれほどいらっしゃるでしょうか? マイケルポーターを読んだ事がある人はたくさんいても、自分の頭で整理して戦略を語れる、あるいは戦略を評価できる人は少ないのではないでしょうか。 例えば先の問いに対し、この本を読み込んでいれば、「違いをつくって、つなげること」と明確に答えられるはずです。 その上で、違いとは何か、つなげるとは何か、についても具体的、実践的に語ることもできるでしょう。
教科書的に読み、戦略の起承転結を明確に自分の言葉で説明できるくらいになってから、 例えば三枝さんの本を読んでいたら、大分違ったかもなと、今になって思います。 少なくとも、きちんと頭で消化しながらこの本を読むことで、 事業戦略とはどういったものか、について自分の中に一つの“軸”を作ることができると思います。
その軸ができてから色々な本を読んで、軸を進化させていくこともできるでしょう。 そういった思考の基点になりうる本として、非常によくできていると感じました。
ただ、500ページあり、文章、構成が冗長に感じる部分が多少あったため、星はひとつ減らして4つとしました。
現在さまざまな企業を相手にコンサルタントの仕事をしていますが、 自分の仕事を振り返ってもこういったストーリー視点が欠けていることが多く、 大変反省させられた一冊でもあります。
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