織田と武田の2大勢力の狭間で翻弄される岩村城、そんな中武田二十四将のひとり秋山伯耆守虎繁は東美濃の岩村城攻略を命じられる。岩村城は城主遠山影任亡き後その未亡人(織田信長の叔母おつやの方)が城主となり信長の5男(御坊丸のちの織田勝長)を養子に迎え継嗣していたが圧倒的に有利な武田勢に囲まれて無血開城、その時の和議の条件が秋山伯耆守虎繁の正室に未亡人おつやの方を迎えると言うものであった。岩村城は武田の勢力下に入るものの未亡人おつやの方が城主夫人に納まれば遠山家臣団も肩身の狭い思いをしなくて済む。和議の方便とっしての結婚だったがやがてふたりは愛し合うようになる。武田の勢力が強いままなら万事巧くいくはずだったが・・・
御坊丸は人質として甲府へ送られることに、我が子を人質された信長は激怒、嫡男信忠率いる大軍が岩村城を包囲する。愛する妻と家臣団の命乞いのために虎繁は開城を決意する。そしてふたりは岐阜へ送られ逆さ磔にされてしまう。
戦国の苛烈な運命に翻弄されながらも男と女は惹かれあい愛し合う。
哀しいけれど素敵な戦国の恋物語です。
重源による東大寺の鎌倉再興を題材とした歴史小説。南大門から発見された墨壺をモチーフに物語をふくらませたフィクションだが、墨壺の持ち主である東大寺の宮大工である主人公は、技術的には秀でているものの、人間関係が不得手で「木組み」より配下の「人組み」で苦労する性格。南大門と播磨の浄土寺という現存する天竺様建築を担当したとする設定。仏師として傲慢な快慶が登場するところはご愛嬌か。影の主人公は重源上人で、資金難、旧守派との争い、時には政争に巻き込まれながら大事業を達成する。一般的には意外と評価されていない歴史上の快挙を紹介する秀作。
「後南朝」とは敗者の歴史でもあり、平家落人伝説などとも並び「判官贔屓」の日本人にとっては
哀愁感漂うテーマの一つかも知れない。かく申す私もそこに惹かれて「後南朝ファン」となった。
その「後南朝ファン」にとっては「加害者」ともいえる赤松家遺臣を主役とした作品である。
「嘉吉の乱」やそこに至るまでの経緯や後日譚については割愛するが、その歴史の中で苦闘する
赤松家遺臣たちを描いた作品である。そこに浮き彫りにされるのは彼らの御家再興に全身全霊を
捧げた姿であり、その信念を貫き通した生き様である。その物語には、「後南朝ファン」である私
も感動すら覚えずにはいられなかった。(作者・岩井氏の他作品にもそのような信念を貫く人々が
登場するので、ご興味の節はどうぞ。)
同じ題材を作品にしたものは他にもあるが、後南朝側の立場からの作品が多かったような気がする。
赤松氏側の作品(古文書は別として)としては、播磨地域の郷土史家的な作家の方々によるものは
あるが、比較的メジャーな出版社のものは赤松氏のご子孫にして官能作家としても有名な赤松光夫
氏による「後南朝史 神璽消失」ぐらいではなかったかと思う。そのような意味合いにおいても、
本作品は興味深いといえるのではないだろうか。
末筆ながら、比較的安価に入手できる同題材の作品として笹目広史氏の「紅の雪〜風聞・後南朝
悲史」もあるので、併読されると双方の事情や心情なども更に理解できるような気がして面白い。
また、稀少本ではあるが中谷順一氏の「天を望まん〜後南朝秘話」も適価であれば入手されると
興味が一層深まるであろうと思う。
戦国の世で生き残りをかけ一所懸命生きる人々の姿、そのなかでたくましく成長していく姿を小気味よく描いている。
■戦国時代。美濃の武将・日根野弘就(ひねのひろなり)は、織田信長に攻められて主君が降伏したことに反発。打倒信長を目標に、次々主を変えてゆく。だがそれは一族が転落することを意味した。大嫌いな信長は、ますます力をつけ大きくなってゆく。そして結局、弘就は食い詰めて信長の馬廻り衆として就職するに至る。それは屈辱だが、一族の為だった。1人の男の叛逆と挫折を描く。
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