喩がすごく的を射た感じで面白い。その場面をまさに言いえて妙なのだ。おバカな女子大生のセリフも創作とは思えない。果たしてこのような言語を自在に操る若者が本当にいるのか?いたとして、これ程に脈絡もなく話ができるのか?主人公の桑幸の思考回路の低俗さは自らを鏡に写されているようで、腹を抱えながらも悲哀が漂う。前作の「モーダルな事象」は同じ主人公でも途中から本格ミステリーになったため、重い内容だったが、これは3篇とも軽い話で害がない。 ただ気がかりなのは、千葉県民を敵に回しているのでなないかということだ。青森県民も巻添いを食っており、痛々しい。
最近、『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』なる新刊を出した著者の2005年の旧作。新作を読む前にこの旧作も読んでみたが、なにやら新作とは異なる雰囲気。勤めている大学は違うんだけど、同じ人なの?なんて疑問はあるけど、とりあえずは、まずこの旧作。
文庫判で600ページ近くにもなる分厚い長編。物語は、主人公の桑潟幸一助教授が、ひょんなことから、埋れていた童話作家の遺稿の紹介を依頼されたところから始まる。
依頼した編集者が殺されたことをキッカケに、主人公は、「アトランティスのコイン」をめぐる謎に巻き込まれていく。主人公のほかに、元夫婦探偵なんかも登場して、謎解きに加わり、体裁はまさにミステリ。これに日本文学近代史といった文学の匂いをさせながら、オカルトやホラーめいた感じも漂わせ、ミステリというジャンルを超えた感じのする小説で、まさに著者らしい小説。
一応、ミステリなので、謎も解かれていくが、決してそれが話の中心になることはなく、少しずつずれていく。読み終えても、なんだか、また謎の中に放り出されたよおうな感じが残る。不思議な読後感のある1冊だった。
学生の言葉なのであろうか。作者が大学教授でもあるところに通じているのだろうか。おふざけでない面白さを感じる。む
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