ジャズ好きの村上春樹(かつてジャズ喫茶を経営していたこともある)と和田誠の共著の「ポートレイト・イン・ジャズ」という本からインスパイアされ、両人が選んだオムニバス盤。音源はヴァーヴが中心。面白いのは、その選曲。超有名曲や超名演奏にこだわらず、「極私的」な選択。ビル・エヴァンスの「マイ・フーリッシュ・ハート」などの超有名曲以外に、スタン・ゲッツの「ムーヴ」始め、あまり知られていない曲も多い。両人のジャズの趣味が分かるのが面白い。ビッグ・バンドからピアノ・トリオまで、色々楽しめる。表紙イラストはもちろん和田誠さん。
日本で社会主義という言葉はもはや過去のものと捉えられがちである。
実際に社会主義ということばが意味することや、社会主義が持ちうる幅について知ろうとする人は本当に少ない。
とにかく社会主義は時代遅れなのであり、過去なのであるからもはや現代社会における意味を考察するには値しないと決め付けられているように感じる。
本書は社会主義ということばが人によってさまざまに解釈されうることを教えてくれる。
そして国家の枠を抜け出したグローバルな思考を持った社会主義はむしろ現代においてこそ求められているのだということを示唆している。
歴史的に見て、社会的弱者を救ってきたのは資本主義社会においても社会主義的な側面だったことは否定できないはずであり、「左」や「社会主義」、「赤」=悪というようなイメージだけで物事を語るわかった風なフリをする方々にぜひ読んでいただきたい。
基本的には進歩的というか、どちらかというと北朝鮮寄りの観点や立場から書かれたものである。冷戦終了後にアクセス可能になった史料・証言等から抗日戦争からごく最近の金正日死去までフォローした一冊にとしあがっている。大日本帝国の崩壊から米ソ冷戦、南北対立などの様相を北朝鮮からの視点で通史として眺められるのは意外にまれなことではないだろうか。 和田氏の学説としては、以前からの「遊撃隊国家」説から「正規軍国家」にその見方が変わったとのことで、一定の変化は見られるようである。朝鮮戦争、ラングーン事件、日本人拉致事件等に関しては「以前に比べれば」だいぶ立場が変わってきているようである。しかし、まだまだ一部の用語やレトリックに抵抗を覚える点が見い出されるのが多くの読書人・知識人の感想であろう。
和田誠、村上春樹、お気に入りのジャズですから、悪いはずがありませんね。それはさておき、付属の村上春樹が書いているライナーノーツがとにかくいいです。ジャズにまつわる個人的な逸話です。他では読めない文章ですので、それだけでも価値があります。
一般的には領土問題は、日本側の立場だけで論じられているが、これではいつまでたっても解決しない。相手側の言い分も良く知り、平和的に双方が納得できる解決法を話し合ってゆかねばならない。・・・という、ごく当たり前の視点に戻してくれる。北方領土問題も、無理やり作られた日本側の言い分に無理があることも明らかにする。日本側の言い分ばかり聞かされていたものには目からうろこのような視点が開けてゆく。高校の歴史教科書に使って欲しいくらいの良心的な本だと思う。
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